2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドットの位置・形状制御による高機能エレクトロニクス・フォトニクス素子の開拓
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23681029
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 憲治 東京大学, ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構, 特任講師 (00436578)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子ドット / テラヘルツ波 / トンネル効果 |
Research Abstract |
本年度は、「位置・形状制御した量子ドット(QD)構造の電気伝導・光学特性の評価と素子応用の探索」を中心に研究を推進した。この結果をQDの形成へとフィードバックすることで、「量子ドット構造の形成技術の更なる高度化」も併せておこなった。更に、作製した量子ドット構造を用いて、テラヘルツ帯の電磁波照射によるキャリアダイナミクスの制御をおこなうことに成功した。まず、位置・形状制御された単一のQDの特性評価を、電気的・光学的双方の観点から行った。単一の位置・形状制御されたInAs QDを活性層とするトランジスタ素子を作製し、その伝導特性を評価した。QDのサイズを変化させることで、少数電子領域から多数電子領域までの広い電子数領域での伝導特性を制御性良く観測することに成功した。一方で、光学特性に関しては、成長温度を変化させながらフォトルミネッセンス特性の評価をおこなった結果、成長温度によって形成されるQDのサイズが大きく変化することを発見すると同時に、発光特性がQDの成長温度に強く依存し、QDを高温成長することによって、良い発光特性が得られることが分かった。更に、未開拓の電磁波と呼ばれるテラヘルツ電磁波を用いた、電子・スピン状態の制御技術の開拓をおこなった。実験系の最適化をおこなった結果、世界で初めてテラヘルツ波と量子ドット中の電子との相互作用を非常に大きくすることに成功した。テラヘルツ電磁波照射下において、量子ドット中の電子によるテラヘルツ光子の吸収による明瞭な電流ピークが新たに観測され、テラヘルツ帯での光支援トンネル伝導が起きていることがわかった。この結果は、テラヘルツ電磁波による単一電子・スピン状態の制御に道を拓くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目標は、「位置・形状制御した量子ドット構造の電気伝導・光学特性の評価と高機能電子デバイス・フォトニクスデバイスの実現」であった。研究実績の概要の項目に記した通り、量子ドットの電気的・光学的な特性評価を行い、結晶成長に反映させることで素子特性の向上につなげることができた。また、テラヘルツ電磁波を用いた伝導制御にも成功し、テラヘルツ帯のオプトエレクトロニクス素子への応用に道筋をつけた。以上の結果から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究により、良好な光学特性や伝導特性を示すサイズ・位置・形状が精密に制御されたInAs量子ナノ構造を作製するための手法が明らかになった。この技術は、単一光子と単一電子スピンの間の量子メディア変換や、量子計算、量子通信などの要素技術全ての基盤となり得る技術であり、その応用範囲は非常に広い。今後、この技術を用いて高機能電子・光デバイスを、高い歩留まりで実現する研究を遂行する。特に、自己組織化法では形成が困難な2重量子ドット構造や、量子リング構造における電荷・スピン制御をおこないたい。また、本年度はテラヘルツ電磁波の照射による系の伝導特性の制御にも成功したが、この技術では世界的にも大きな優位性を有する。この技術を用いて、テラヘルツ電磁波を用いた単一電子・スピン状態の制御に関する研究へと展開したい。
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Research Products
(11 results)