2011 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体コヒーレントテラヘルツ光源の実証と実用化
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23681030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
掛谷 一弘 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80302389)
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Keywords | 固有ジョセフソン接合 / テラヘルツ発振 / Bi2212 / メサ構造 / 同期現象 |
Research Abstract |
平成23年度の研究において,発振に関する電極依存性を明らかにすると共に,市販のTHz分光計を超える分解能のシステムを構築し,バイアス電流によって周波数が変化することを示した.また,時間領域分光測定のための準備を行った. Bi2212単結晶から作製したメサ構造上の銀電極(本来バイアスに用いられる)の厚さが100m以下の時に発振が観測され,400nmの時には発振は観測されなかった.Bi2212の熱伝導率は銀のそれと比べて1/1000程度なので,固有ジョセフソン接合が電圧状態になった時に生じる自己発熱が熱浴とみなせるサファイア基板に拡散する経路は,メサ直下にある超伝導状態の結晶ではなく電極であると考えられる.したがって,温度分布の不均一性の違いが発振の有無を左右していることになる.数値計算を用いた理論的な解析によると,固有接合からのTHz発振には個々のジョセフソン接合における位相差の急激な空間変化(πキンク)が同期する必要があるため,この実験結果から温度の不均一性はπキンクの起源になると考察される. 光学定盤上にワイヤーグリッドなどを配置し,マーチンパプレット式の分光計を構築した.反射鏡のスキャン幅を20cmにとったので,分解能は0.025cm^1(0.75GHz)となり,市販のものより一桁高い分解能が得られた.この分光計を用いて,発振周波数の温度依存性やバイアス依存性の測定を行った.その結果,発振されている周波数は25Kから55Kへの温度の上昇に伴い,0.53THzから0.47THzまで減少している.また,一定温度中でのバイアス電流依存性については,45Kにおいて0.53THzから0.49THzまで電流増加に伴い周波数が減少しているという結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究終了後も視野に入れた研究の発展性の観点から,市販の分光器を購入せずに自作するという選択をした結果,光学系の構築に時間を費やしてしまい,周波数制御のための複数電極素子については進展が得られなかった.しかしながら,コヒーレント観測のための準備は1年前倒しで進んでおり,24年度での大幅な進展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,発振周波数について再現性の高い精密な実験を行い,πキンク同期現象の起源について答えを見出す.また,複数電極を用いた周波数制御素子の作製を本格的に開始する.時間領域分光のための準備を進め,必要な資材の選定と分光のための技術を獲得していく必要がある.
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Research Products
(13 results)