2012 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体コヒーレントテラヘルツ光源の実証と実用化
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23681030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
掛谷 一弘 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80302389)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 固有ジョセフソン接合 / テラヘルツ発振 / Bi2212 / メサ構造 / 同期現象 |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、平成23年度に構築した高分解能型FTIR分光計を用いて、高温超伝導THz光源に関する以下の特性を明らかにした。 1)超伝導結晶上に形成したメサ構造型発振素子の場合、発振周波数は熱浴の温度上昇と共に減少する。例えば、20Kでの発振周波数が0.53THzである場合は、55Kでは0.44THzまで減少する。2)高バイアス領域の発振については、一定の温度ではバイアス電流の増加に伴い、発振周波数は減少する。これはバイアス電流によって実効的に温度が上昇しているためだと解釈できる。3)超伝導基板を持たない単独素子の場合、発振周波数は温度依存性を示さない。 これは、固有接合における電場振幅が積層(c軸)方向について単独素子では変化しないのに対して、メサ素子では超伝導基板との界面において節となっているためにロンドン侵入長の温度依存性が発振周波数に表れていると解釈される。4)同一結晶上に電極厚さの異なる素子を複数形成したところ、電極厚さが薄いほど、広い温度範囲で発振が観測され、発振周波数の温度変化も強いことが分かった。このことは、平成23年度に得られた結果(I. Kakeya et al., Appl. Phys. Lett. 100, 242603 (2012) )を裏付け、素子内における温度分布の不均一性が発振にとって本質的であることを示している。5)メサ構造素子上に複数の電極を形成して、発振特性を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々な形状の素子を作成してその発振周波数の温度依存性を精密に測定することができた。その結果、温度分布の不均一性が発振に重要であるという確証を得た。この結果は、同様の研究を行っている国内外のグループから強い関心を惹き、平成24年6月に出版された論文は既に多くの場所で引用されており、その主張を強化する最近の系統的な結果は本研究において特筆すべき成果である。また、発振周波数の温度依存性については米国のグループが2011年に発表した理論で美しく説明ができるだけでなく、新たな発振特性を示唆しており、平成25年度に質の高い論文を発表するためには十分のデータが得られた。また、同一結晶上に複数のメサを形成することにより再現性の高い実験結果が得られたことは、高温超伝導THz光源が実用に供されるための素子構造への強い提案となった。
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Strategy for Future Research Activity |
実績5)において言及した複数電極素子における発振特性を精密に明らかにすることにより、固有接合間の同期現象の起源について明らかにする。また、臨界電流密度の高い物質から素子を作成することにより、単一素子からの発振強度0.1mWを目指す。高強度化の実現と合わせて強度に依存しないTHzフォトンのコヒーレンス長を測定する。
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Research Products
(13 results)