2012 Fiscal Year Annual Research Report
ゲーティングナノポアによる単分子流動制御技術の開発
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23681031
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 正輝 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (40362628)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ゲーティングナノポア / DNAシーケンサー / 単分子流動 / 1分子解析技術 / トンネル伝導 |
Research Abstract |
微細加工技術を用いてシリコン基板上にSiO2で被覆された金属細線を作製し、エレクトロマイグレーション法により金属細線を破断することで、約2nm程度のナノギャップ電極とナノ流路を持つ横型ナノデバイスの作製に成功した。一方、微細加工プロセスの最適化を行うことで、直径20nmの縦型ナノデバイスの作製に成功し、ゲート電圧の印加により、1分子の流動速度を制御するサラウンディングゲートナノポア(Surrounding Gate Nanopore:SGNP)の開発に成功した。SGNPは、ゲーティングナノポア構造にゲート電極を組み込んだ集積ナノ構造であり、ゲート電極がSiO2膜により被覆されている。 直径20nmのSGNPを用いて、500塩基からなるDNAのナノポア通過時間のゲート電圧(Vg)依存性を調べたところ、Vg=0Vでは、通過時間は35msであったが、Vg=-0.5Vでは、通過時間は350msと遅くなった。負のゲート電圧を印加すると、ナノポア界面にはカチオンが集積されるため、負に帯電するDNAの電気泳動方向とは反対方向の電気浸透流がナノポア界面近傍で生じる。その結果、負のゲート電圧が、DNAの通過時間を遅くしたと考えられる。流体力学と電磁気学を同時に取り入れるマルチフィジックスモデルを用いて、SGNP内のDNAの流動ダイナミクスをシュミレーションしたところ、負のゲート電圧印加により、DNAの電気泳動方向とは反対方向の電気浸透流が発生することが支持された。一方、正のゲート電圧を印加すると、ナノポア界面にアニオンが集積される結果、DNAの流動方向と同じ方向に電気浸透流が発生するため、DNAの通過時間は短くなることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度計画した10nm以下のゲーティングナノポアデバイス(GNP)より微細化された2nmのGNPの開発に成功し、ゲート電極を組み入れたSGNPの開発に成功した。さらに、直径20nmのSGNPを用いて、ゲート電圧によるDNAのナノポア通過時間の変調を実現し、実験結果とシュミレーションを合わせることで、ゲート電圧による電気浸透流制御を用いた1分子流動ダイナミクス制御技術の可能性を実証した。一方で、1分子解析を基盤とするDNAシークエンサーや生体分子解析では、検出物質のナノポアへの導入率・捕捉率の低さが重要な解決課題となっている。本研究では、1分子DNAの塩基配列決定精度の向上を目指して、ナノポアを通過するDNAの速度を遅くする流動制御技術の開発に注力してきた。しかし、本研究目的を越えて、ゲート電圧によるナノポア通過速度の制御技術が、1分子DNAのナノポアへの捕捉率を向上させる技術にも応用可能であることに気が付いた。そこで、1分子DNAのナノポアへの捕捉率を流体力学と電磁気学を同時に組み入れたマルチフィジックスモデルを用い、また、DNAのコンフォメーション変化によるエントロピートラップを考慮したシュミレーションを行ったところ、正と負のゲート電圧が、それぞれ高い・低いDNA捕捉率を与えることを見出した。1分子DNAの捕捉率の観点から実験結果を解析すると、負のゲート電圧は、遅いDNA通過速度を与える一方で、低い捕捉率を与えることを明らかにした。この結果は、ゲート電圧による1分子流動制御技術が、1分子DNAシークエンサーに高い捕捉率と高い塩基読取精度を同時に与える技術になることを示唆しており、1分子流動制御技術の新しい展開が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、ゲート電圧による電気浸透流制御を用いた1分子流動速度の変調を実証したが、実験で得られた流動速度変調率は、シュミレーション解析から得られる変調率の10分の1程度と小さかった。この原因は、SGNPでゲート絶縁膜となるSiO2の不均一な膜質と構造に起因する低い誘電率と大きなリーク電流であると考えられる。そこで、来年度は、ゲート絶縁膜の作製条件の最適化を行い、ゲート電圧により効果的な速度変調を行う。なかでも、これまでゲート電極として用いてきた金は、SiO2との接合性が悪いため、接合性の高い白金などの金属をゲート電極に採用して、SiO2膜の膜質と膜構造の改善を行う。また、本年度のシュミレーション解析から得られた、ゲート電圧による1分子DNA流動速度の溶液イオン濃度依存性を実験により検証し、SGNPにおける1分子流動速度制御技術の基盤科学を構築する。本年度の研究から、高い捕捉率と高い読取精度を与える1分子DNAシークエンサーを開発するためには、DNAがナノポアに捕捉されるまでは正のゲート電圧を印加し、ナノポアに捕捉された瞬間に負のゲート電圧に切り替える制御システムが必要であることが示唆された。そこで、ゲート電圧により、1分子DNAのナノポアへの捕捉率と流動速度を同時に制御するため、ナノポアを流れるイオン電流をプローブとするゲート電圧のフィードバックシステムを開発する。さらに、SGNPを用いた1分子DNAの塩基配列読取を行い、読取精度のゲート電圧依存性を明らかにし、1分子DNAシークエンサーの基盤技術を確立する。特に、電気泳動と電気浸透流によるイオン電流と、塩基識別を行うトンネル電流の相関を明らかにし、1分子流動速度制御技術と1分子識別技術の融合を行う。
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Research Products
(15 results)