2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23681032
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
福間 康裕 独立行政法人理化学研究所, 量子ナノ磁性研究チーム, 客員研究員 (90513466)
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Keywords | スピン注入 / スピン蓄積 / スピン流 |
Research Abstract |
非磁性体中のスピン蓄積を増大させる研究に取り組んだ。スピン蓄積により生じる有効磁場を隣接する物質に作用させて物性変化を引き起こすには、有効磁場の増大つまり巨大なスピン蓄積の実現が強く望まれる。このためには、大電流密度印加時にも効率的にスピン注入が可能な強磁性体/非磁性体界面の開発が必要である。本研究では、スピン注入における界面の影響を詳細に調べて、従来の100倍以上のスピン蓄積を実現することに成功した。 面内スピンバルブ素子を作製し、非局所スピン注入法により非磁性体中のスピン蓄積を検出した。NiFe/Ag金属結合を用いたスピン注入においては、Agのスピン抵抗がNiFeよりも一桁程度大きく、NiFe中で生成されたスピン流の一部しかAg中へ注入されずに、そのほとんどは界面で消失することを明らかにした。このために、非局所スピン注入測定において小さなスピン蓄積信号しか検出できなかった。そこでMgO層厚を連続的に変えた素子を作製した。MgO層の界面抵抗がNiFeのスピン抵抗値と一致するとスピン注入効率が改善し始めて、スピン蓄積信号が向上する。界面抵抗の増加と共にスピン蓄積信号は増大し、Agのスピン抵抗の10倍程の界面抵抗をもつMgOを用いてNiFeとAg間のスピン抵抗不整合を完全に克服できることを明らかにした。これら実験結果は素子構造を考慮した1次元のスピン拡散モデルによる解析値と非常によい一致を示しており、データの信頼性を裏付けているといえる。このNiFe/MgO/Ag接合は通常のトンネル接合よりも界面抵抗が数桁小さく、スピン注入効率のバイアス依存性はみられない。このために、3mAの電流印加により200μV以上の出力信号を実現した。更に、蓄積されたスピンの動的特性をハンル効果測定により評価し、Ag中のスピンがAlよりも10倍速く拡散することや6μmもの長距離伝搬できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン蓄積の増大に成功し、材料物性制御技術の開発へと取り組む準備が完了した。既に、素子作製技術の確立にも着手しており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
磁場により相転移が生じる強磁性半導体やメタ磁性金属の成長技術を確立する。この物質を面内スピンバルブ素子上に作製し、スピン蓄積からの有効磁場を用いて磁気特性や結晶特性の変化を引き起こす。これら変化を電子顕微鏡による構造特性評価や電気的特性評価により検出する。スピン蓄積を更に増大する技術開発も進め、巨大な有効磁場を作用させて相転移を引き起こす。
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