2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23681032
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
福間 康裕 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 准教授 (90513466)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピン注入 / スピン流 / スピン蓄積 |
Research Abstract |
非磁性体中のスピン蓄積を増大させる研究に取り組んだ。スピン蓄積により生じる有効磁場を隣接する物質に作用させて物性変化を引き起こすには、有効磁場の増大つまり巨大なスピン蓄積の実現が強く望まれる。昨年度に開発した低抵抗MgO界面層による高効率スピン注入手法に加え、スピン注入用の界面数を増やし、かつ拡散する純スピン流の方向を制限することでスピン蓄積素子の出力信号を500マイクロボルト以上に改善した。この新しい素子構造では、従来の素子構造と比較して純スピン流の生成効率およびスピン蓄積量を4倍まで向上できることを明らかにした。また、純スピン流の伝送特性を調べるために、スピンに対して垂直方向の磁場を印加してハンル効果測定を行った。拡散伝導においては、検出側電極に到達する集団スピンの回転角度は印加磁場の強度に比例して増加し、到達する集団スピンの向きの分散は増大する。本研究では、拡散距離の増加と共にこの分散が低減して、外部磁場に応答して一斉に回転することを明らかにした。これらスピンの集団回転運動は、これまでに報告されている金属や半導体、グラフェン等の全ての物質中で普遍的な現象であることも明らかにした。 材料物性制御技術の開発に向けて、対象とする材料の成長および微細加工技術の確立を行った。磁気相転移温度近傍で巨大磁気抵抗効果を示す磁性半導体EuSの合成を行い、10Kにて強磁性から常磁性への磁気相転移を確認した。しかしながら、電気伝導性が確認できなかった。このために、Gdを2%添加したEuSを作製し、転移温度が45Kに向上すると共に、巨大磁気抵抗効果を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スピン蓄積の増大および物性制御の対象となる材料の合成および微細加工技術を開発した。最終目標の実現に向けての要素技術は確立できており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見および技術を活かして、スピン蓄積を利用した材料物性制御技術の開発を目指す。EuSへとスピン蓄積からの有効磁場を作用させることで磁気相転移を引き起こし、磁気抵抗効果を用いて相転移の検出を行う。
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