2012 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポゾンによるゲノム改変技術を元にした脊索動物の発生と進化メカニズムの解明
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23681039
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10400649)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脊索動物 / 発生 / 進化 / トランスポゾン / ゲノム / 遺伝学 |
Research Abstract |
脊索動物カタユウレイボヤを用いてトランスポゾン技術を元にして突然変異体を単離することと、突然変異体を基軸にして遺伝子機能と脊索動物の進化メカニズムの解明を目的としている。本年度は人工ヌクレアーゼTALENを用いた内在遺伝子ノックアウトが可能であることを示した。この技術によりHox12が変態後の消化管形成に必要であることが判明したため、その詳細な機能を現在追っている。またTALENによる組織特異的な遺伝子機能破壊方法を確立し、FGF3が神経系で尾部吸収制御に関わっていることを明らかにした。変異体系統の解析では、Hox1トランスポゾン挿入系統を用いてこの遺伝子の表皮における新規機能についての論文を発表した他、Hox1系統において、甲状腺相同器官である内柱の構造に異常をしょうじることを突き止めた。この異常の原因を探り、内柱の後方領域が形成されていないこと、後方領域が前方化するいわゆるホメオティック変異が生じていることを明らかにした。ホヤの特徴であるセルロースの獲得について、AP2転写因子が進化的に関与していることを突き止めた。 Gal4挿入系統については本年度のスクリーニングから新規系統を1つ作製したが、系統作製効率が悪いという問題を抱えていた。そこで実験手法の見直しを進め、転移酵素発現系統を更新にアプローチした。具体的には精巣での強い発現が認められる遺伝子の転写調節領域を単離し、その領域を用いた転移酵素発現系統の構築を進めた。実際にこの系統を用いてのGal4系統作製は来年度の課題となっている。 昨年度にSleeping Beautyトランスポゾンの有効性を確認したため、本年度はローカルホップ法に対応したトランスポゾンベクターを作製し、そのベクターをゲノムに挿入させたトランスジェニック系統の作製を行った。来年度に本系統を用いてのローカルホップ転移並びにゲノム欠失に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カタユウレイボヤにおいて夢の技術であったノックアウト法を確立したこと、またこの技術から組織特異的な遺伝子機能阻害の可能性を切り開いたこと、さらにこれらの技術を用いて遺伝子の未知の機能を明らかにし、さらにそれらから脊索動物の進化に対する考察を得ていることから、順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子ノックアウト法が可能になった現在の状況を考慮し、逆遺伝学的アプローチで特定の遺伝子に着目し機能面により早く到達するというストラテジーから脊索動物の発生と進化メカニズムを探るという大目的をより効率よく達成するための技術的な面での改良を行っていく。またGal4エンハンサートラップ法などトランスポゾン技術を元にしていく路線についても、技術改良を元にして順遺伝学的アプローチが効率よく行えるような体制の整備を目指して研究を進める。
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