2011 Fiscal Year Annual Research Report
陸域地下圏のメタンフラックスに関与する未知アーキア系統群の発見と新生物機能の解明
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23681044
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
玉木 秀幸 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (00421842)
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Keywords | 未知微生物 / 地下圏 / シングルセル / メタゲノム / ゲノム / 次世代シークエンス / アーキア / 生物地球化学 |
Research Abstract |
本研究は、陸域地下圏環境に優占する未知・未培養アーキア群とその周辺微生物の実体を明らかにし、メタンフラックス等の重要な生物地球化学プロセスにおいて未知微生物群が果たす役割を解明することを目的としている。今年度は、まず、日本、米国において、氷河堆積物環境、沖積層堆積物環境、油田環境等の様々な陸域地下圏環境を対象として、分子生態学的解析、微生物学的解析、シングルセル解析、地球化学的解析に必要な量と質の地下圏試料の採取、収集、保存を精力的に実施した。その際、特にシングルセル解析用の環境試料の保存方法、前処理方法については、定法が確立されていないことから、詳細に検討し、最適化を行った。次に、収集保存した地下圏試料から全核酸を抽出し、次世代シークエンス技術等も活用しながら、分子生態学的解析を実施した。その結果、いくつかの地下圏環境においては、遺伝子レベルでも新規な未培養アーキア系統群が存在していることが明らかとなった。また未知アーキア系統群とともに未知バクテリア系統群が陸域地下圏に存在することも確認された。また現在、地下圏試料中の水質、ガス成分等の分析を実施し、安定同位体解析等の地球化学的解析を進めるとともに、シングルセル解析に着手している。今後は、未知・未培養微生物系統群を豊富に内包するような陸域地下圏試料を複数選抜し、シングルセル解析に供試するとともに、得られたシングルセルからゲノムを増幅することによって、未知・未培養地下圏微生物系統群のシングルセルゲノムを取得し、それらの未知生物機能の解明を進める予定である。また、地下圏環境を模擬した集積培養システムの構築も進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、陸域地下圏環境に優占する未知・未培養アーキア群とその周辺微生物の実体を明らかにし、メタンフラックス等の重要な生物地球化学プロセスにおいて未知微生物群が果たす役割を解明することを目的としている。今年度は、アメリカと日本の両国において、地質学の専門家と協力しながら、様々な陸域地下圏環境(氷河堆積物環境、沖積層堆積物環境、油田環境等)から解析用の試料を広範に採取、収集、保存し、陸域地下圏に棲息する未知未培養アーキア・バクテリア系統群の解析を行ってきており、既にいくつかの地下圏環境において新規性の高い未知未培養微生物系統群の特定に成功するなど順調に成果を挙げつつある。一方で、シングルセル解析における試料の保存方法と前処理方法については、定法がないこと、また環境試料によって手法を最適化することが必要であったため、詳細な条件検討を実施した。既にいくつかの環境試料においては最適化を終えており、可能なものについてはシングルセル解析に着手している。また環境試料中の水質、ガス成分の分析や安定同位体比解析といった地球化学的解析も予定通り実施してきている。また陸域地下圏環境を模擬した培養システムの構築にも着手している。以上の理由から、本年度は(2)おおむね順調に進展している、と評価した
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題におけるこれまでの取組みにより、様々な陸域地下圏環境から、シングルセル解析、分子生態解析、微生物学的解析、地球化学的解析に必要な試料を収集、保存し、いくつかの地下圏環境からは未知未培養微生物系統群の発見に至っている。今後は、収集、保存した陸域地下圏環境試料を対象に分子生態学的解析を精力的に実施し、さらなる未知・未培養微生物系統群を見出すとともに、そうした未知微生物系統群を豊富に内包する地下圏環境試料の選抜を実施する予定である。未知微生物群が豊富な地下圏試料が入手できれば、シングルセル解析がより容易かつ効果的に実施できる可能性がある。そのためにも、シングルセル解析用の環境試料の前処理方法、保存方法について環境にあわせて条件検討を実施する。また、地下圏環境から未知微生物系統群のシングルセルを分取し、そのシングルセルからのゲノム増幅にも着手する。来年度以降に、得られた未知微生物系統群由来のシングルセルゲノムを解読し、基本代謝を解析するとともに、地球化学的データならびに集積培養法等も駆使しながら、未知微生物群が陸域地下圏環境において果たす生物地球化学的機能、役割の解明に挑む。
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