2011 Fiscal Year Annual Research Report
共生器官の選択的機能阻害による害虫制御技術の基盤研究
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23681050
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
土田 努 富山大学, 事務局, 特命助教 (60513398)
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Keywords | 細胞内共生 / RNA-seq解析 / 農薬開発 / タバココナジラミ / ケミカルバイオロジー / 菌細胞 |
Research Abstract |
本研究課題では、世界最重要害虫の一つであるタバココナジラミを研究対象として、これまでとは全く異なる作用機序をもった害虫防除法の開発の礎を築くことを目標としている。具体的には、害虫にとって必須の共生細菌を収納する器官"菌細胞塊"で作用する遺伝子を網羅的に解析し、その機能を化合物を用いて特異的阻害することにより、効果的で環境負荷の少ない害虫制御技術を開発することを想定している。 本年度は、タバココナジラミ菌細胞で特異的に発現する遺伝子を探索するため、RNA-seq用ライブラリ作製法から検討を行った。タバココナジラミは体長1mm未満の微小な昆虫であり、従って解剖によって取り出した菌細胞からは、1頭あたり数ngのtotal RNAしか回収できない。次世代シークエンサーたよる解析に最低限必要な100ng以上のmRNAを得る為には、数千頭を解剖し、菌細胞を回収しなくてはならない計算になる。これを回避するため、Ribo-SPIA法によりmRNA特異的な増幅を行って、数μgのcDNAを得ることに成功した。得られたcDNAからライブラリを作成し、次世代シークエンサーHiSeq 2000を用いて、RNAseq法により解析を行った。既にde novoアセンブリや、アノテーション、マッピングは終了した。得られた結果により、rRNAの割合は抑制され、宿主および共生細菌の遺伝子発現が効率的に捉えられていることが確認された。現在、菌細胞で特異的に発現する遺伝子のプロファイリング作業を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タバココナジラミの菌細胞から、大量に混入するrRNAを除去しつつ、宿主由来および共生細菌由来の発現遺伝子をRNA-seq法によって解析する方法を確立した。既にdenovoアセンブリ、アノテーション、マッピングは終了しており、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、成虫の菌細胞で特異的に発現している宿主側遺伝子のプロファイリングを行い、これまでに報告されている他種昆虫での菌細胞発現遺伝子との比較により、細菌との共生に特化した菌細胞の普遍性と多様性についての洞察を得る。同時に、菌細胞内で高発現している共生細菌側の遺伝子についても明らかにし、共生にかかわる分子機構に、宿主と細菌の両面から迫る。そのようにして、共生に重要な役割を担う阻害標的を絞り込み、新規害虫防除法の開発を目指す。
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