2012 Fiscal Year Annual Research Report
共生器官の選択的機能阻害による害虫制御技術の基盤研究
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23681050
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
土田 努 富山大学, 学内共同利用施設等, その他 (60513398)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / RNA-seq解析 / 農薬開発 / タバココナジラミ / ケミカルバイオロジー / 菌細胞 |
Research Abstract |
本研究課題は、世界最重要農業害虫の一つであるタバココナジラミを研究対象として、これまでとは全く異なる作用機序をもった害虫防除法の開発の礎を築くことを目標とする。具体的には、害虫にとって必須の共生細菌を収納する器官 “菌細胞塊”で作用する遺伝子を網羅的に解析することで、必須の微生物との共生を成立させる分子機構を明らかにし、その機能を特異的阻害することにより、効果的で環境負荷の少ない害虫制御技術を開発することを想定している。 本年度は、昨年度までにRNA-seq解析によって得られた共生器官特異的発現候補遺伝子について詳細な解析を行った。RNA-seqおよびde novoアセンブリによって得られた配列をアノテーション解析し、共生細菌由来と考えられる原核生物型遺伝子と、タバココナジラミ由来と考えられる真核生物型遺伝子を区別した。得られた真核生物型遺伝子のうち、発現量およびfold changeの値がともに上位100位に入っているものとして、菌細胞で発現する27の共生関連候補遺伝子を同定した。これらのほとんどはデータベース上に存在しないか、機能未知タンパク質の遺伝子であった。候補遺伝子群のうち、特に発現量が高いものとしてisoformを含むを9遺伝子に対する特異的プライマーを設計し、定量PCRによる解析を行った。その結果、それらのうち8種類の遺伝子については、菌細胞でのみ特異的に発現していることが確認された。これらの遺伝子は、微生物との共生によって独自の進化を遂げた新規機能遺伝子である可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq法およびその後の定量RT-PCRにより、必須の細菌との共生の成立を司ると考えられる複数の候補遺伝子を得ることが出来た。それらの遺伝子は、データベース上に相同性の高い遺伝子が存在しないか、あるいは機能が明らかになっておらず、微生物との共生によって独自の進化を遂げた新規機能遺伝子である可能性が高いと考えられる。本研究課題は、最終的には新規害虫防除法の開発を目指すものであるが、昆虫類が生態系で生きて行く上で欠かすことのできない分子機構の解明にも貢献できており、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、共生関連候補遺伝子について、雌雄別あるいは成長段階を追って発現解析を行い、それらの遺伝子の発現パターンを明らかにする。併せて、タバココナジラミ体内での局在を in situ ハイブリダイゼーションにより確認する。続いて候補遺伝子の全長配列の取得、およびRNAiによる機能解析を行う。菌細胞内で重要な機能を担っている蛋白遺伝子が同定されれば、コード領域を発現ベクターに組み込んで、大腸菌等で候補タンパク質を合成を行う。得られた候補蛋白質を精製し、化合物アレイに供することで、阻害剤候補となる低分子化合物の探索を進める。
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