2013 Fiscal Year Annual Research Report
共生器官の選択的機能阻害による害虫制御技術の基盤研究
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23681050
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
土田 努 富山大学, 先端ライフサイエンス拠点, 特命助教 (60513398)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞内共生 / RNA-seq解析 / 農薬開発 / タバココナジラミ / 菌細胞 |
Research Abstract |
本研究課題は、世界最重要農業害虫の一つであるタバココナジラミを研究対象として、これまでとは全く異なる作用機序をもった害虫防除法の開発の礎を築くことを目標としている。具体的には、害虫にとって必須の共生細菌を収納する器官“菌細胞塊”で作用する遺伝子や菌細胞の遺伝様式を詳細に解析することで、必須の微生物との共生を成立させている機構を明らかにし、その機構を特異的に阻害することにより、効果的で環境負荷の少ない害虫制御技術を開発することを想定している。 本年度は、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq解析ならびに定量PCRにより、菌細胞で特異的に高発現する複数の遺伝子群の存在を明らかにした。本種の菌細胞発現遺伝子プロファイルは、これまでに報告のあるアブラムシやゾウムシなどが発現する遺伝子群とは大きく異なっており、菌細胞の進化を考察する上できわめて興味深いものであるが、その部分配列にはデータベース上に相同性を示すものが存在せず、遺伝子機能を推定することができなかった。当該遺伝子の機能解析については、虫が微小かつ針の通りにくい形状であり、残念ながら現在までインジェクションによるRNAi法には成功していない。 また本年度は、本種にとって必須の器官である菌細胞そのものがどのような遺伝様式を示すのかについての解析も進めた。古くから、本種の菌細胞は体細胞とは異なる遺伝様式をとることが示唆されていたが、我々はマイクロサテライトマーカーを用いた解析を行い、これを指示するデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菌細胞発現遺伝子の機能解析については計画通り進まなかった面もあるが、菌細胞自体の遺伝様式についての新知見も得られている。本課題が対象としている必須共生器官の生物学が明らかになっており、計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
菌細胞特異的発現遺伝子の全長配列をRACE法を用いて明らかにする。全長配列が得られた候補遺伝子については順次、特異的抗体を作成し、免疫組織科学的手法により、菌細胞内局在の確認を行う。菌細胞で高発現し、重要な役割を担っていることが期待されるタンパク質遺伝子群について、その発現パターンのカタログ化を進める。菌細胞高発現遺伝子については、特異的阻害剤の探索を進め、新規殺虫剤のシード化合物を得ることを目指す。
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