2011 Fiscal Year Annual Research Report
東北アジアにおける金属器の拡散と在地社会の変化に関する考古学的研究
Project/Area Number |
23682012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (50566940)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 金属器 / 東北アジア |
Research Abstract |
初年度である今年度は、東北アジアという地域を設定して金属器の拡散過程および在地社会の変化の研究を進めて行くという研究の枠組みの有効性の確認や、国内外の研究者との意見交換を積極的に進め、現状で明らかになっていることを整理した。それをもとにし、現地調査や発掘調査報告書の吟味を通して、(1)青銅器と鉄器の受容過程が東北アジアと西北ヨーロッパでどう異なり、それが石器製作にどう影響しているのか、(2)金属器受容期の食料生産、特に農耕の形態はどのようなものであったのか、(3)磨製石器製作工房からの出土遺物と周囲の石材分布調査・実験製作を通じた石器製作技術の復元、(4)鉄器普及期前後の住居や集落の様相などについて、一定の見解をまとめ、それぞれ発表した。(1)については、前者が青銅器の後まもなく鉄器の普及をみたのに対し、後者がそうでなかったこと、それによって威信材としての石製武器の消長が両地域で大きく異なることを指摘し、(2)については、炭化イネ頴果の安定同位体比分析を用いて青銅器時代の稲作が水稲であった蓋然性を補強することで従来の陸稲先行説を具体的根拠をもって批判し、(3)については、原石から製品にいたるまでの製作工程を一つの遺跡の中で段階別の素材や加工道具を示して初めて復元し、(4)についてはカマドの受容という画期的な事件が鉄器受容期に前後して起こっていたことを明らかにした。また、ロシア、朝鮮半島、日本における武器形石器のあり方について学術誌に特集を組み、地域間比較を試みたが、この内容が近日出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の整理や基礎的な資料収集を行うと同時に、様々な背景をもつ各国の研究者との議論を深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
東北アジアの青銅器を生み出す背景となった中央ユーラシア地域の青銅器の組成、製作技術に関する研究を行うことで、東北アジアの独自性を明確にする。また、同地域が中原的青銅礼器を受け入れなかった要因が何にあるのか、土器・石器などの青銅器以外の遺物を総合的に分析して明らかにする。
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