2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国における労働権の権利構造とそのメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
23683001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
御手洗 大輔 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (80553099)
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Keywords | 権利構造 / 所有権 / 研究方法論 / 法継受 / 理論研究 / 制度研究 |
Research Abstract |
2011年度の研究目的は、当初の計画どおりに本研究の前提となる中国法の権利構造とそのメカニズムの解明を中心に実施した。具体的には、私が所有権の法的構造を転換する契機と仮定している56年の私有家屋改造実施意見に関係する史料収集とその分析及び日本の先行研究を法学(とくに法解釈学)の視点に基づいて整理した。前者は(1)関係史料の検索であり、後者は(2)研究方法論の巨視的検討であると位置づけられる。本年度の研究成果について。(1)については、実施意見を作成するための基礎資料を送付した調査地の一部(北京市・上海市・天津市・山東省済南市・同青島市)の档案館を訪問して関係史料の存否を検索した。中央へ送付した基礎資料の原本が保管されているはずである。だが、いずれの档案館においても今回の検索ではその所在を確認できなかった。但し、この検索の過程で当時の状況について推測される間接史料を若干入手して分析した。ソ連法の法継受をはじめとする制度の移植に対する意識をあらためて確認できた。他方で、隣人をはじめとする他者と自分の間の環境の不公平から保護を要求する強い意識、すなわち現実の人間の感情も看過できないとの認識に至った。なお、残りの調査地である遼寧省瀋陽市・黒竜江省ハルビン市・江蘇省南京市・同無錫市・同蘇州市の档案館への訪問が時間的制約から本年度中に実施できなかった。(2)については、50年代から今日に至るまでの日本における現代中国法研究について整理した。研究動向を回顧すると、法解釈の本質的探究の欠如等が原因となって理論研究よりも制度研究に傾斜しているといえる。それゆえに理論研究への回帰が必要であり、直面する課題は研究上のコンセンサスの確立にあるとの結論をえた。本研究の最終目標は、純粋に法学的なコンセンサスの形成を促進することにある。よって、この結論は、次年度以降の理論研究における分析視点の外枠を示したものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に訪問予定であった調査地(遼寧省藩陽市、黒竜江省ハルビン市、江蘇省南京市、同無錫市、同蘇州市)の档案館を訪問して関係史料の存否が検索できなかったことを除けば、当初の計画どおりに達成できた。上記5か所の訪問ができなかった主な理由は時間的制約による。残余の档案館のうち3か所は同一省内であり、その他2か所についても比較的近接している。よって、時間的制約が解消されれば速やかに実施できると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中に実施予定であった一部の档案館への訪問及び関係史料の存否の検索を次年度内に速やかに実施する。また、当初の計画どおりに社会保障制度改革と労働権の関連性に関する調査を開始する。すでに社会保険法が2011年7月より施行されているので現地調査等を保留すべき理由は見当たらない。とはいえ、個人研究で社会保障法制全般を取り扱うことは時間的・物理的に難しいと思われるため、たとえば失業保険法制に限定する形で社会保障制度改革と労働権の関連性を研究し、理論研究における分析視点をより洗練することを考えている(なお、腹案として社会保障をキーワードに共同研究を組織することも検討している)。同時に、現地調査の候補地として想定している上海市、北京市、湖北省武漢市について、適宜、その準備を本格化させてゆく予定である。
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Research Products
(1 results)