2011 Fiscal Year Annual Research Report
国際化とイノベーションの相互作用と企業の生産性に関する分析
Project/Area Number |
23683003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
伊藤 恵子 専修大学, 経済学部, 准教授 (40353528)
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Keywords | 経済政策 / 輸出 / 海外直接投資 / イノベーション / 生産性 / 企業成長 |
Research Abstract |
本研究は、国際化とイノベーションのリンケージや相互作用がどのように企業パフォーマンスの向上に結びつくのかをミクロ・データを用いて分析することにより、海外市場からの学習効果のメカニズムを解明するものである。国際化とイノベーションという2つの異なるテーマの融合を目指す実証研究は、近年、欧州諸国を中心に増加しているが、学術的にコンセンサスを得られる評価・結論は導かれていない。本研究では、日本について実証的に分析し、東アジアの成長モデルにおける国際化とイノベーションの相互作用について、さまざまな政策的含意を引き出す。また、日本では、中小企業に対する輸出促進など、政策的に企業のグローバル化を支援する方向の議論が活発になっているが、実証研究結果に基づいた具体的な政策提言を行うことも目指している。 このような目的に向けて、平成23年度は、経済産業省『企業活動基本調査』の個票データを利用して、国際化と国内研究開発活動との関連を分析した。輸出を開始した企業、輸出を停止した企業、期間を通じて継続して輸出していた企業とに分類し、輸出開始後に、国内の研究開発活動(費用や開発部門従業者数)、売上高や生産性、雇用などがどのように変化したかを検証した。輸出先を区別して分析した場合、欧米に輸出開始した企業は売上、雇用、生産性などのパフォーマンス向上が大きく、アジアに輸出開始した企業はパフォーマンス向上効果が小さかった。また、欧米に輸出開始した企業は特許の取得にも積極的で研究開発志向が強いことも示された。この結果の背景には、輸出の動機(自社の技術力を活かした新規市場開拓か、または取引先の海外移転に伴う部品納入先の変化)や輸出先企業のタイプ(海外企業かまたは日系企業か、など)により、学習効果の大きさに違いがあることを示しているかもしれない。この点に関し、さらに深く分析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経済産業省『企業活動基本調査』を使った分析は順調に進展している。この企業統計に文部科学省『全国イノベーション調査』を接続したデータの利用申請を完了し、両統計を接続したデータを分析する枠組みを整理しているところである。ただし、厚生労働省の『賃金構造基本調査』から労働者の属性データを利用するところまでは、まだ目途が立っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は主に、経済産業省の『企業活動基本調査』と文部科学省の『全国イノベーション調査』とを個票レベルで接続したデータを利用して、イノベーション活動と国際化との関係の分析を深めていく。本研究を遂行するため、文部科学省科学技術政策研究所の客員研究官として採用され、文部科学省内にてデータ整理作業・分析を行う予定である。 また、日本と韓国の企業データを利用して、日韓製造業企業の研究開発活動の国際比較研究を行う。近年、いくつかの産業においては、世界の市場における韓国企業のプレゼンスが拡大しているが、研究開発の度合いや集中度と国際市場でのプレゼンスとの関連、生産性との関連などを分析する。本研究に関しては、特に韓国企業データの分析について、専修大学の金榮愨准教授や韓国・Gachon大学のChin Hee Hahn准教授などの助言、協力を得ている。
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Research Products
(6 results)