2012 Fiscal Year Annual Research Report
財務報告に対する経営者の姿勢が企業価値に与える影響に関する実証分析
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23683008
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大鹿 智基 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (90329160)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 会計学 / 財務報告 / 価値関連性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,上場企業の経営者が真摯な態度で経営活動をおこない,その経営活動の結果を,財務報告を通じて中立的かつ誠実に開示することが,情報作成者にとっても有意義である,という仮説を,企業価値向上という観点から実証的に確認することにある.特に,短期的には費用の増大やキャッシュフローの減少など,企業にとっての不利益を招くと考えられるテーマを3つ取り上げ,短期的な利益・キャッシュフローの減少があったとしても,株式市場が将来の利益・キャッシュフロー持続性の向上を推定し,高い評価を付していることを確認する. (1)定時株主総会の活性化の影響に関する分析では,株主に対する情報公開が積極的な株主総会活性化企業においては,その他のディスクロージャーの質も高く,株式市場も個別企業の情報に強く反応することを示唆している分析結果を得て,すでに論文として公表済みである. (2)温室効果ガス削減のための投資の影響については,温室効果ガス排出量の少ない企業の株式時価総額が高いことと,排出量を削減した企業の株式リターンが高いことを確認している.なぜこのような現象が観察されるかについて,SBSC(Sustainable Balanced Scorecard)の考え方を用いて経路の推定をおこなった.この分析は,阪智香氏(関西学院大学)および岡照二氏(関西大学)との共同研究の成果であり,英文での論文掲載が決定している. (3)人的資産への投資の影響については,上場企業の平均賃金(全従業員の平均賃金・30歳従業員の平均賃金)データを入手し,平均賃金の高い企業において,生産性(賃金一単位あたりの売上高),利益率(ROE),さらに企業価値が高いことを観察した.また,賃金引き下げが必ずしも企業価値向上をもたらすわけではないとする分析結果を得た.これらの検証・分析結果についてはすでに論文として公表されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つのテーマについて,それぞれ並行して実証分析をおこなっている. (1)定時株主総会の活性化の影響に関する分析では,当初予定していた成果についてすでに複数の論文として公表済みである.平成25年度においては,長寿企業という新たなアプローチを用いた分析も行う予定であり,順調に進展しているものと考える. (2)温室効果ガス削減のための投資の影響については,温室効果ガス排出量の少ない企業の株式時価総額が高いことと,排出量を削減した企業の株式リターンが高いことを確認するとともに,その現象が生じる原因についても仮説の検証が完了している.これらの成果については,すでに複数の論文として公表済みであり,また平成25年8月に開催されるアメリカ会計学会年次大会での口頭発表も採択されており,十分な成果が挙がっているものと考える. (3)人的資産への投資の影響については,上場企業の平均賃金(全従業員の平均賃金・30歳従業員の平均賃金)データを入手し,平均賃金の高い企業において,生産性(賃金一単位あたりの売上高),利益率(ROE),さらに企業価値が高いことを観察した.また,賃金引き下げが必ずしも企業価値向上をもたらすわけではないとする分析結果を得た.これらの検証・分析結果についてはすでに論文として公表されている.また,イノベーションという新たなアプローチからの分析の準備も進んでおり,順調に進展しているものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ研究は順調に進展しているものと考える.今後の研究についても,順調に進捗するものと考えている.実証分析のために必要なデータは入手済みまたは入手の目途が立っている状態であるし,共同研究者との役割分担・意思疎通も問題ない.分析結果が当初の予定どおりにならない可能性は当然に存在するが,複数のテーマを並列に扱っているため,研究計画全体に大きな影響を及ぼす事態は招かないものと思う.
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Research Products
(4 results)