2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロマシン技術を用いた革新的な宇宙X線望遠鏡の開発実証
Project/Area Number |
23684009
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
江副 祐一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90462663)
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Keywords | X線天文学 / X線望遠鏡 / マイクロマシン |
Research Abstract |
本研究では、これまで世界最軽量級であった日本のすざく衛星のX線望遠鏡を、2桁軽量化しつつ、角度分解能を1桁改善した、「1000平方cmの有効面積と10秒角の角度分解能を備えたkgクラスの世界最軽量X線望遠鏡」を目的とする。具体的には(1)シリコンドライエッチングプロセスによる軽量X線反射用の微細構造の製作、(2)X線LIGAプロセスを用いた軽量X線反射用の金属微細構造の製作、(3)磁気流体を用いたエッチング面の研磨、(4)シリコン高温アニールを用いたシリコンエッチング面の平滑化、(5)塑性変形もしくは弾性変形による高精度の変形を行う。完成する望遠鏡は我々のオリジナルである。我々は今年度、(A)シリコンX線望遠鏡1段分の性能向上、(B)シリコン2段望遠鏡の組立プロセスの確立、さらに(C)Ni X線望遠鏡1段分の試作、などに取り組んだ。代表的な成果について以下、順に述べる。 (A):シリコンドライエッチングはエッチングガスと側壁保護ガスを交互に導入して、垂直性の良い自由な形状の穴を掘る。以前の条件では、反射率に影響する10μm以下の粗さはアニールを加えることで1 nm rms以下に抑えられていたが、結像性能に影響する100μmスケールの粗さは150 nm rms程度と大きく、角度分解能を制限していた。そこでエッチングと保護のバランスを最適化することで、粗さを20 nm rmsと8倍改善した。さらに表面を平滑化するためのアニールの時間も最適化し、14 nm rmsを達成した。この条件で試作した4インチX線望遠鏡1段分にX線を照射した所、角度分解能は14x14 mm入射で14分角となった。ペンシルビームスキャンの結果、主原因が変形精度であると分かったため、現在は変形条件出しに着手している。 (B);本格的な宇宙X線望遠鏡では収差を抑えた集光結像のため2回反射型が必要となる。そこで独自のアラインメント装置を用いて、曲率半径1000mmと333mmで曲げた2枚のシリコン基板の位置あわせを行った。可視光を用いて位置の微調整を行った結果、並進精度<2μm、回転精度<2分角を達成し、本手法で世界で初めて2段望遠鏡を完成した。今後はX線評価へと進む。 (C):X線LIGAはシンクロトロン光を用いたリソグラフィーと電析を組み合わせた技術である。我々は電析中に気泡が入らないように現像から電積まで液浸で行うプロセスを確立し、望遠鏡1段分を完成した。今後はX線評価を行う予定である。 これらの結果に関連して、国内学会で5件の発表と2件の招待講演を行った。また国際学会で4件の発表と1件の招待講演を行った。また4本の査読付論文が出版もしくは受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定の通り、今年度はシリコンX線望遠鏡1段分の性能向上、シリコン2段望遠鏡の完成、X線LIGAを用いたNiX縁望遠鏡1段分の試作に成功した。さらにこれらの成果に加えて、原子滞積法を用いたシリコンX線望遠鏡1段分へのイリジウムの膜付けと反射試験、4インチ基板用の磁気流体研磨装置の立ち上げも行った。個々の要素技術の性能改善は引き続き必要であるが、このように一連の目標以上の技術に目処を付けることができてきているため、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
シリコンドライエッチングを用いたX線望遠鏡1段分の性能向上に向けて、高温塑性変形の条件出しや新たな側壁の平滑化プロセスを試し、さらなる角度分解能の向上を目指す。またX線LIGAを用いたX線望遠鏡1段分の性能を評価し、シリコンとどちらがより高性能の鏡を実現できるか判断を行い、必要に応じて一つに絞り込む。さらにシリコン2段望遠鏡のX線性能を評価し、組立プロセスにフィードバックをかけつつ、性能を向上することを目指す。こうした要素技術開発と平行して、将来のX線天文衛星、惑星探査衛星や技術実証衛星に本装置を提案・検討を進める。また製作した2段望遠鏡に対して、打ち上げ時の振動・衝撃やデブリの影響などを見るための環境試験も計画し、技術成熟度を高めてゆくことを目指す。
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Research Products
(16 results)