2012 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロマシン技術を用いた革新的な宇宙X線望遠鏡の開発実証
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23684009
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
江副 祐一郎 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90462663)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | X線天文学 / X線望遠鏡 / マイクロマシン |
Research Abstract |
本研究では、これまで世界最軽量級であった日本のすざく衛星のX線望遠鏡を2桁軽量化しつつ、角度分解能を1桁改善した、「1000 平方cm の有効面積と10秒角の角度分解能を備えた kg クラスの世界最軽量X線望遠鏡」を目的とする。具体的には(1)シリコンドライエッチングプロセスによる軽量X線反射用の微細構造の製作、(2)X線LIGAプロセスを用いた軽量X線反射用の金属微細構造の製作、(3)磁気流体を用いたエッチング面の研磨、(4) シリコン高温アニールを用いたシリコンエッチング面の平滑化、(5) 塑性変形もしくは弾性変形による高精度の変形、(6) 原子層堆積法を用いた側壁への重金属膜付けを行う。完成する望遠鏡は我々のオリジナルである。 我々は今年度、(A) シリコン2段望遠鏡の組み立てとX線性能評価、(B) シリコン望遠鏡1段分の側壁平坦性の改善、(C) 性能評価のためのX線ビームラインへのCCDの導入と光線追跡プログラムの構築、(D) 惑星探査ミッションに向けた光学系デザインを含めた装置検討などに取り組んだ。 これらの成果に関連して、国内学会で7件の発表と2件の招待講演を行った。また国際学会で4件の発表と1件の招待講演を行った。また3本の査読付論文が出版された。さらに1件の解説記事を学会誌に掲載し、1件の特許を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定の通り、今年度は4インチシリコン2段望遠鏡の性能評価、4インチシリコン望遠鏡1段分の性能向上に成功した。さらにこれらの成果に加えて、X線CCDを用いた評価システムと光線追跡プログラムの構築、探査衛星の光学系デザインを含む装置設計を行ったほか、世界最大級となる12インチシリコン基板を用いた望遠鏡1段分の試作や、4インチ基板用の磁気流体研磨装置の立ち上げも行った。目標とする角度分解能および有効面積を達成するための、要素技術の性能改善は引き続き必要であるが、このように一連の目標以上の技術に目処を付けることができてきているため、本研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはシリコンドライエッチングを用いた望遠鏡1段分の性能向上に向けて、新たに産総研が所有する最先端のエッチング装置を使用し、側壁の平坦性の向上を狙う。現在の側壁平坦性から見積もられる角度分解能は分角程度であるが、これを秒角台に持って行くことを目指す。また高温塑性変形の条件出しによる鏡配置精度の向上や、新たな側壁の平滑化プロセスも試して、より良い角度分解能を目指す。さらにシリコン2段望遠鏡の試作品第一号機を用いて行ったX線実験の結果をフィードバックして、組立装置を改良し、より高精度の位置合わせを行って、性能を上げる。こうした技術開発と平行して、将来ミッションへの本望遠鏡を用いた装置の提案と検討も引き続き行って、検討を深める。そのために望遠鏡に対して、打ち上げ時の振動・衝撃やデブリの影響などを見るための環境試験も計画し、技術成熟度を高めてゆくことを目指す。
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Research Products
(19 results)