2011 Fiscal Year Annual Research Report
ベリー位相によるマグノンの異常輸送現象と新機能開拓
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23684023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野瀬 佳文 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (80436526)
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Keywords | マグノン / ベリー位相 / ホール効果 |
Research Abstract |
本研究では、マグノンのベリー位相によって誘起された異常輸送現象、新機能の研究を行うことを目的としている。申請者らは最近、マグノンがそのベリー位相によって進む方向が曲がるマグノンホール効果を熱ホール伝導度を用いて観測することに成功したが、平成23年度はこのマグノンホール効果をさらに調べるために様々な強磁性体において熱ホール伝導度を測定した。パイロクロア酸化物のLu2V2O7、Ho2V2O7、In2Mn2O7では、有限の熱ホール伝導度を観測することに成功した。その温度磁場依存性は、マグノンホール効果の描像と一致するものであり、実際マグノンのベリー位相理論で観測結果を説明することが出来る。一方で、ペロブスカイト型酸化物の場合、YTiO3、La2NiMnO6では有限の熱ホール効果は観測されないが、BiMnO3では小さいながらも有限のホール効果が観測される。YTiO3、La2NiMnO6は、単位胞に4つの磁性元素があるGdFeO3型の結晶構造をしており、マグノンの有効磁束は互い違いになる。この場合、対称性からベリー位相誘起のマグノンホール効果がゼロになる。一方で、BiMnO3では軌道整列の影響で、Mnイオンを16個含むような単位胞を持ち元の対称性が破れているため有限のマグノンホール効果が観測されると考えられる。以上のように、マグノンホール効果における結晶構造の効果を明らかにし、ベリー位相理論の有用性を確認することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していたマグノンホール効果の研究では格子依存性を明確に示す結果を得てPhys.Rev.B誌に掲載することが出来、Editor's choiceに選ばれた。一方で、平成24年度に予定していた新機能開拓を目指したマイクロ波実験の準備にもとりかかれている。
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Strategy for Future Research Activity |
マグノンの新規機能を開拓するために、マグノンを共鳴励起できるマイクロ波実験を集中的に行う予定。
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Research Products
(6 results)