2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23684026
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若林 裕助 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40334205)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
Keywords | 表面・界面物性 / 物性実験 / 固液界面 / 放射光 / 有機デバイス / イオン液体 |
Research Abstract |
今日の電子デバイスのほとんどはシリコンを基礎とした技術に依存している。しかし,これを炭素ベースに置き換える事で,ある種の用途には大きなメリットが生まれ得ることが認識されるようになってきた。有機半導体を基礎に電子デバイスを作製する事で安価,軽量,柔軟性を持った透明なデバイスを作製できる,あるいは印刷によってデバイスが作製できる特性を生かして,電子デバイスの多品種少量生産が可能となると期待されている。そのために近年,有機半導体デバイスの研究が盛んになっており,現在では半導体素材の性能としてはアモルファスシリコンを上回る易動度の有機半導体素材まで開発されている。 本研究では,有機半導体デバイスで利用される界面の物性を微視的に理解するために,0.01nmの分解能で界面構造を明らかにする。そのために放射光を用いた表面X線回折法を用い,さらにホログラフィの考え方を取り入れた解析を適用する。 今年度,我々は2つの成果を得た。一つは有機半導体物質テトラセンの表面X線回折データの取得,もう一つは有機トランジスタのゲート絶縁層に用いられるイオン液体の構造を明らかにしたことである。イオン液体と固体の界面を形成し,電圧を印加することで界面に電気二重層が形成されることはよく知られているが,その電気二重層の直接観測はこれまでほとんどなされてこなかった。放射光を用いた我々の測定の結果,電圧の方向や大きさに依存して界面付近の液体構造が大きく変化し,電気二重層の極性反転が生じている様を明瞭に観察することに成功した。さらにイオン液体の形成する電気二重層では,陽イオンと陰イオンが交互に層状構造を形成していることも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度終了時点で課題申請段階の23年度の予定をほぼ達成し,24年度計画に少し入った程度の進行であるが,これは研究開始が23年度の11月からであるためで,ほぼ予定通りのペースで進行している。 初年度は金と有機固体の界面についての調査,及び金とイオン液体の界面構造の研究を予定していた。これまでのところ,後者については完全に期待通りの結果を得ている。一方前者は実験の結果,想像と全く異なる状態が生じている事が明らかになった。金-有機固体界面はほとんどの領域で接しておらず,単に人の目で見たスケールで近接しているだけである。デバイス駆動の観点で問題になる電子移動の観点では,極めて限定された部分を通して電子の移動が生じている。当初想定していたのは全体が均一に接している状況であったので,この部分の測定は原理的に不可能であると判明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
SrTiO3とイオン液体の界面で,X線照射によってSrTiO3が腐食してしまったことは今後の研究計画に大きな影響を及ぼす。常識的にはかなり安定な金属酸化物であるSrTiO3が腐食してしまうのならば,有機固体とイオン液体の界面はX線照射で即座に試料が溶けてしまうと思われる。そこで,まずはSrTiO3とイオン液体の界面を測定するために,全体を冷却して液体を凍らせ,反応を抑制することを試みる。これで安定した測定が可能であるならば,有機固体とイオン液体の界面測定も実現可能性を帯びてくる。 この方向と別に,時間分解測定や,固液界面の固体側の構造変化を調べるような方向の努力を進める。
|