2011 Fiscal Year Annual Research Report
汎用レーザー超高分解能光電子分光による相境界・共存相における特異な電子物性の解明
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23684027
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木須 孝幸 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20391930)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / レーザー / 銅酸化物高温超伝導体 / 有機超伝導体 / フェルミオロジー |
Research Abstract |
本年度研究計画である超高分解能光電子分光用汎用狭帯域レーザーの開発を行った。納品後の設定・調整により本システム発注時の目標性能である、波長210nm・パルス幅10ps(光源幅260μeVに相当)・繰り返し周波数80MHzにおいて出力0.5mWを得ることに成功した。これは、光電子分光を行うに当たって十分な光強度である。また、安定した連続発振のために必要となるレーザー周りの温調等も併せて行い、レーザー光電子分光実験では十分な長さである24時間の連続発振を可能とした。本件度計画における光源の構築は本研究目的を遂行するに当たって十分な性能を得ることに成功したと言える。 並行して光電子分光装置側の改良・構築を行った。既存の希ガス放電管光源にて様々なテストを行った結果、現在所有する電子エネルギー分析器の電源では目標とする性能の達成が不可能であることが判明したため、超高分解能を達成可能なより安定性の高い電源を新たに構築した。これにより、電子エネルギー分析器のエネルギー分解能がlmeVを切ることが確認された。さらなる分解能向上のための電子エネルギー分析器の調整は、本研究計画において開発した超高分解能光電子分光用汎用狭帯域レーザーにより行う。現在、超高分解能光電子分光用汎用狭帯域レーザーとの接続を含めて光電子分光装置本体の構築を行っており、その構築は順調に進展している。 併せて、得られるであろう超高分解能を最大限に活用するために必要となる、低温を達成するための冷却システムの構築も行っており、最低温度3K以下を達成することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザーの納品が10月であり、その後の構築及び調整、問題となった連続発振の安定性の向上などを行ったため、レーザーの完成が当初の予定よりも2カ月ほど遅れたため、当初の本年度目的であった装置全体の性能の評価、及び角度分解の調整を行うには至らなかったが、個々の性能の評価から導かれる全体性能は当初目的を達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は直ちに全体システムの構築を最高性能を得るための冷却機構等も含め行い、性能評価までを平成24年度前半に終わらせる。その後、完成したシステムを用い、直ちに研究計画にある「多層型銅酸化物高温超電導体」の研究を行い、フェルミ準位近傍の超伝導準粒子の観測を通じて超伝導と反強磁性との関連を調べ、高温超伝導実現のための知見を得る。併せて、有機超伝導体の超伝導状態の直接観測を初めは角度積分によって観測し、最適な測定条件を速やかに見出し、角度分解による有機超伝導における超伝導準粒子の観測を行い、相図上におけるモット絶縁体近傍から金属領域までにわたるその振る舞いの違いをアニオンを変化させることにより追っていく。
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