2012 Fiscal Year Annual Research Report
スピンギャップ磁性体におけるランダムネスが誘起するボース粒子の局在化
Project/Area Number |
23684029
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
真中 浩貴 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (80359984)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 試料作製 / X線構造解析 / 中性子散乱 / 電子スピン共鳴 / 強磁場磁化測定 / チューブ化合物 |
Research Abstract |
本研究で主に対象にした化合物(CH3)2CHNH3CuCl3(略称 IPA-CuCl3IとIPA-CuBr3との混晶系IPA-Cu(ClxBr1-x)3について, 昨年度行ったX線構造解析の研究より, 中間濃度領域では結晶構造の相転移が起こり, これまでの結晶モデルや磁気モデルでは不適切であることが分かっていた。そこでまず構造相転移が起こっていない極めて微少量の混晶領域における中性子散乱実験をドイツとスイスを中心にして行った。その結果, ボンドランダムネスの効果による磁気励起バンドの広がりによって, 3軸分光器を組み合わせたスピンエコー法を用いた超分解能の測定の威力を発揮する事は出来なかった。しかしながら通常の3軸分光器を用いた実験において, ボースグラスと思われる状態の測定に成功した。しかしながらこの結果は, 他の化合物で報告されている結果とは若干異なっており, ユニバーサルな議論が可能であるか, 今後, より深い考察が必要であることが分かった。一方, 結晶構造が変化する中間濃度領域においては, これまで試料の外形から構造の違いを判別することは難しかった。そこで今年度は2次元イメージング複屈折装置を導入して, 構造の違いを瞬時に判別出来る実験システムを整えた。その上で, 強磁場と高周波を組み合わせた電子スピン共鳴測定より, 理想的な反強磁性共鳴の実験結果が得られた。現在, 理論解析中であるが, おそらく単純な2軸異方性のモデル説明できると思われる。これらの結果は比較対象として測定した, チューブ構造を有するフッ化物の実験結果と非常に酷似している。したがって今後, どのような共通点があるか詳細に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最重要課題である試料作製環境の整備に関してはこの2年間でほぼ充実した。一番の武器であった中性子散乱を用いた研究に関しては, 国内での実験研究が出来ない事情もあり, 海外の実験施設に依存した研究が続いている。この点では労力の割には, 実験が若干遅れ気味であるが想定内である。 国内の強磁場施設を用いた実験研究も大阪大学極限センターの招聘教員の立場を利用して順調に実験を消化できている。 今後はより多くの均一な試料を大量生産することが研究のキーとなってくると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
混晶化合物の結晶構造が初期モデルとは異なっていたため, 再検討が必要となっている。しかしながら本発見によって, これまで理解できなかった実験結果を矛盾無く説明できるようになった。 今年度導入した複屈折イメージング装置をフルに活用することによって, 結晶の見極めが容易に出来るようになることから, 多くの実験が進むことを期待している。 さらにチューブ状化合物が本研究と密接に関わっており, 多くの類似性がすでに指摘されているので, 同時並行で研究を進めていきたい。
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Research Products
(24 results)