2011 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム3自由表面で期待されるマヨラナ表面状態の観測
Project/Area Number |
23684030
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池上 弘樹 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 専任研究員 (70313161)
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / 表面束縛状態 / トポロジカル超流動 / マヨラナ粒子 / 電子バブル / P波超流動 |
Research Abstract |
超流動ヘリウム3B相の表面にはギャップレスな表面Andreev束縛状態が形成され、さらに表面Andreev束縛状態は粒子と反粒子が等価なマヨラナ粒子的性質を持つというが理論的に予想されている。本研究の目的は、超流動ヘリウム3-B相の自由表面下に形成される表面Andreev束縛状態の存在を確認し、異方的磁場応答によりそのマヨナラ粒子性を検証することである。その検証手法として、本年度は、超流動ヘリウム3自由表面下にトラップされた負イオン(電子バブル)を用いた。電子バブルの輸送現象を0.2mKという超低温領域まで測定可能な測定系を構築し移動度の測定を超流動B相で行った。その結果、0.2mKにおいても電子バブルの移動度はバルク準粒子により支配され、表面Andreev束縛状態からの寄与は小さいことが判明した。一方、超流動A相で、電子バブルの軌道が1ベクトルと垂直方向に曲がるというintrinsic Magnus効果を観測した。この効果は、超流動A相が時間反転対称性を破っていることを直接反映した現象である。時間反転対称性の破れを直接観測した実験は、本研究が初めてである。また、超流動ヘリウム3B相の表面に形成される表面Andreev束縛状態による帯磁率の増大を観測するために、超流動ヘリウム薄膜を簡単に実現できるマイクロチャネル電極を作製し、超流動ヘリウム4で予備実験を行った。マイクロチャネル電極でヘリウム表面上にトラップされた電子の移動度の測定を行い、予想通り超流動薄膜が実現している事を確認し、超流動ヘリウム3表面Andreev束縛状態の研究に使用可能である事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子バブルの輸送現象を超低温領域まで測定可能となった。そのことにより、超流動B相では、超低温においても電子バブルの移動度はバルク準粒子により支配さていることが判明した。一方で、超流動A相で時間反転対称性の破れに起因するintrinsic Magnus効果という重要な効果を観測した。さらにマイクロチャネル電極を用いて超流動ヘリウム3表面Andreev束縛状態の研究するための礎を築いた。
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Strategy for Future Research Activity |
正イオンの輸送現象の測定を超流動B相で行い、表面Andreev束縛状態の観測を目指す。また、本研究により発見されたintrinsic Magnus効果の性質について実験的理解を深め、1ベクトルの作るtextureやそのダイナミクスの性質の解明を行う。さらに、これまでに開発したマイクロチャネル電極を超流動ヘリウム3に用い、表面Andreev束縛状態観測を試みる。
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Research Products
(3 results)