2012 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム3自由表面で期待されるマヨラナ表面状態の観測
Project/Area Number |
23684030
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
池上 弘樹 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 専任研究員 (70313161)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
Keywords | 超流動ヘリウム3 / 表面束縛状態 / マヨラナ粒子 / トポロジカル超流動 / イオン / P波超流動 |
Research Abstract |
超流動ヘリウム3-B相の表面には、そのトポロジカルな性質を反映して、ギャップレスな束縛状態が表面に形成される事が予想されている。さらにその表面束縛状態は、粒子と反粒子が等価なマヨラナ粒子的性質を持つと考えられている。本研究の目的は、超流動ヘリウム3-B相の自由表面下に形成される表面束縛状態の観測およびそのマヨナラ粒子性の検証である。本年度は、表面束縛状態を観測することを目指して、自由表面下にトラップされたイオンの移動度の測定を行った。測定には正イオンを用いた。負イオンに対しては昨年度測定済みであり、表面束縛状態は観測されていない。正イオンは、負イオンより大きさが1桁小さく、また有効質量も1桁小さい。そのため、イオンの3He準粒子による散乱メカニズムが異なり、移動度の大きさや温度依存性が異なる。そのゆえ、負イオンで観測されなかった表面束縛状態が、正イオンでは観測される可能性が有る。 正イオンの移動度を0.2mKという超低温領域まで、表面束縛状態が形成されている深さで、深さを変えて測定した。測定された移動度は深さ依存性を示さない。これは、正イオンの移動度がバルク準粒子との散乱で決まっており、表面束縛状態からの寄与は小さいことを意味する。 正イオン、負イオンで共に深さ依存を示さない理由として、二つの可能性が考えられる。一つは、0.2mKという超低温においてもバルク準粒子との散乱の寄与が支配的な事、もう一つは、表面束縛状態のマヨラナ粒子的性質により、散乱断面積が小さくなっていることである。一つ目の可能性を検証するため、表面束縛状態を通常のフェルミ粒子と仮定して、表面束縛状態による散乱の寄与を見積もった。その結果、最低温付近では、表面束縛状態が観測されるのに十分な大きさまでバルク準粒子の寄与が小さくなっている事がわかった。この事は、二つ目の可能性が高い事を示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超流動ヘリウム3-B相で自由表面下にトラップされたイオンの輸送現象を超低温領域まで行ったことにより、表面束縛状態からの寄与がイオンの移動度に対して小さい寄与しか持たないことが判明した。その理由として、表面束縛状態のマヨラナ粒子的性質により、散乱断面積が小さくなっているという可能性が高い事が分かった。一方で、マイクロチャネル電極を用いて超流動ヘリウム3表面束縛状態の研究するための研究の準備も同時に進めており、計画通りに研究進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
超流動ヘリウム3-B相でのイオンの輸送現象、特に、イオンを加速させ臨界速度を観測する測定を行い、表面Andreev束縛状態の観測を目指す。臨界速度のイオンの深さ依存性の詳細を調べ、表面束縛状態の性質を解明する。また、マイクロチャネル電極を超流動ヘリウム3に用い、表面Andreev束縛状態観測を試みる。
|
Research Products
(5 results)