2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23684036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
水野 大介 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (30452741)
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Keywords | 非平衡 / 力学特性 / マイクロレオロジー / 細胞 / 揺動力 / 揺動散逸定理 / 細胞骨格 |
Research Abstract |
細胞内部で生み出された揺動力や細胞内外の力学的性質は、分化、成長、運動、物質生産等の様々な細胞の振る舞いに大きな影響を与える。しかしながらその動作原理は主に細胞内部の力学的環境に対する理解が不足しているために殆ど明らかとなっていない。そもそも細胞内部は、熱的な揺らぎよりもはるかに大きな揺動力の生成と散逸のために、典型的な非平衡状態にあり、その力学特性は、平衡状態とは大きく異なる。しかしながらこうした非平衡現象を統一的に理解するための普遍的な理論枠組みは存在せず、個別に究明する必要がある。 そこで本研究では、細胞力学のモデルシステムであるアクチン・ミオシンゲル、および細胞抽出液中に分散させたコロイド粒子、さらに細胞内部に貪食させたコロイド粒子をプローブとしてactive/passiveMR計測を行った。細胞のMR計測のための特殊システムが完成させ、通常のガラスボトムディッシュ上で培養された健常な細胞を観測した。蛍光微粒子(粒径0.6μm)をプローブとして用いることで、他のオルガネラと明確に区別した。これにより細胞骨格ゲルと細胆中における非平衡度と力学特性を定量化した。さらに非平衡揺らぎの統計分布を解析した結果、分布は著しく非ガウスであり、より大きな安定分布のクラスであるLevy分布と指数分布の和で理解できることが明らかになった。Oxford大学理論グループとの共同研究により、Levy分布の畳み込みとしての非平衡揺らぎの理論分布関数を求めた結果、よく実験と一致することが確認された。Levy分布は力生成体の強度分布にはあまり依存しないロバストな分布であるために、得られた理論関数は細胞内部の非平衡揺らぎの解析にも応用できる可能性がある。したがって、細胞内部における非熱的揺動力の定量化するための本来想定していなかった方法論につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Oxford大学理論グループから当初想定していなかった共同研究の提案を受け、細胞骨格ゲル中における非平衡揺動力の解析が進んだ。その結果、細胞内部における揺動力の統計分布に関する理解が深まり、事前に想定しなかった方法論で本研究の目的を達成できる可能性がでてきた。反面、新たな細胞モデルの作製と作製した細胞モデル中での非平衡度を生化学的に制御する方法の開発に十分な労働力を割くことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度から生化学の博士号を取得した研究者を新たにスタッフとして迎え入れることで、細胞モデルの作製と制御を進展させる。既にそのための人選を進めている。
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Research Products
(17 results)