2011 Fiscal Year Annual Research Report
統合的モデリング手法による古海洋変動シミュレーション
Project/Area Number |
23684040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 顕 東京大学, 大気海洋研究所, 講師 (70396943)
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Keywords | 気候変動 |
Research Abstract |
海洋堆積物中から得られるいくつかの古海洋指標データから、最終氷期には現在に比べ海洋深層循環が弱化していたと言われている。しかしながら、大気海洋結合大循環モデルMIROCによる最終氷期シミュレーション結果においては海洋深層循環が強化しており、本研究では海洋大循環モデルCOCOによる感度実験を行うことにより、MIROCの結果を解釈するとともに、氷期における深層循環弱化のメカニズムを探った。具体的には、海洋循環の駆動力となる海面での熱フラックス、水フラックス、風応力のそれぞれの変化がどの程度循環場に影響を与えたのかをCOCOによる感度実験を通じて評価した。その結果、熱フラックスのみを氷期条件に変えた場合には、循環が弱化することが示された一方、風応力や水フラックスのみを氷期条件に変えた場合には、循環はわずかに強化した。循環の弱化は、北大西洋高緯度域における海氷の拡大と深層水形成の位置の南下を伴うものであり、氷期における循環の弱化の要因は海面の冷却であることが示唆された。また、MIROCにおける循環の強化は海面での熱フラックスおよび風応力変化の組み合わせによって生じており、両者の変化が非線形的に海氷分布および深層水形成場所を決定していることが示された。さらに、海面条件をさまざまに変えた感度実験の結果から、氷期の風応力条件下においても、MIROCの海面冷却の大きさがある閾値を越えた場合には、海氷分布の拡大と深層水形成位置の南下が起こり、循環の弱化が再現できることがわかった。この循環弱化に必要な海面冷却の閾値の存在は、MIROCを含めたいくつかの結合モデルで氷期の循環が強化してしまうことを説明することができ、さらには氷期に急激な気候変動を引き起こす要因にもなりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究を遂行し、その内容をまとめて国際学術誌に投稿するなど、計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に特に変更の必要はなく、今後も計画通りに研究を推進していく予定である。
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