2012 Fiscal Year Annual Research Report
統合的モデリング手法による古海洋変動シミュレーション
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23684040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 顕 東京大学, 大気海洋研究所, 講師 (70396943)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 気候変動 |
Research Abstract |
前年度に実施した海洋大循環モデル(COCO)を用いた氷期における海洋深層循環のシミュレーションの結果を国際学術誌に投稿し本年度受理された。この論文は、大西洋深層循環には熱的な閾値が存在し、それが氷期における大西洋深層循環の強さをコントロールしていた可能性をはじめて指摘したもので、論文の内容を紹介する記事がNature誌のNews&Viewにおいて掲載され大きな注目を集めた。本年度においては、COCOによる実験をさらに追加し、氷期における急激な気候変動が当時の海洋深層循環の変化とどのように関係していたかを調べるための研究を継続して実施した。 また、本年度はCOCOによる実験に加えて、簡易大気結合モデル(MIROC-lite)による氷期実験に着手した。前年度および本年度に実施したCOCOによる実験の結果から、氷期における大西洋深層循環をモデルで現実的に再現するには、北大西洋高緯度域での深層水形成域が現在のグリーンランド海からより南へ移行することを表現する必要があることが示唆されたため、MIROC-liteにおいてその再現に必要となるモデル解像度の選択、および大気モデルのパラメータ調整を行った。 さらに、氷期における海洋炭素循環についての解析や、大西洋深層循環の変化を記録するPa/Th比やNd同位体比などの古海洋データについてのシミュレーションを、上記の物理シミュレーションで得られた結果を使って実施するための作業を継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、前年度の海洋モデル(COCO)による氷期実験の結果を踏まえ、簡易気候モデル(MIROC-lite)の実験に重点を移す予定であったが、COCOによる実験は大西洋深層循環の変化に海面における「熱・水・運動量フラックス」の変化がそれぞれどのように寄与したかを明確に区別して議論することが可能であり、実験の結果から、当初の予想に反して「熱フラックス」の変化がある閾値を超えると、現在の深層循環のモードから氷期のモードへ移行するという新しい知見を得ることができた。本年度は、この知見をさらに深めるための実験をCOCOを用いて継続した。その分、MIROC-liteによる実験がやや遅れることになったが、今回明らかになった大西洋深層循環の「熱的な閾値」が、氷期における急激な気候変動とどのような関わりがあったかを調べるためには、海面境界条件をさまざまに設定できるCOCOを使った実験をまずは継続して行い、その結果を踏まえたうえでMIROC-liteによる実験に移行するほうが研究をより推進することができると考え、COCOによる実験を優先して実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、COCOによるモデル実験をさらに継続して行い、氷期における大西洋深層循環の「熱的な閾値」と氷期における急激な気候変動との関わりを調べるための研究を進める予定である。その結果を踏まえたうえで、MIROC-liteにおける氷期実験、および氷期から現在にかけての気候の遷移実験を行う予定である。その際、本研究課題によって見出された大西洋深層循環の熱的な閾値が、氷期の急激な気候変動や氷期から現在への移行時に引き起こされた大規模な気候変動とどのような関わりがあったかに特に注目して研究を推進する予定である。
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Research Products
(6 results)