Research Abstract |
本研究では,琉球列島における過去数百~数千年間の津波と台風の高波の規模(最大値)を,リーフ上の巨礫群を用いて明らかにすることを目的としている.本年度は,沖縄県久高島,石垣島,宮古島や鹿児島県奄美大島,喜界島で現地調査を行い,台風の高波または津波で打ち上げられたと考えられる巨礫群の分布調査を行った.調査では,一地域あたり統計的に有意な個数になるまで巻尺,クリノメーター,ハンディGPSを用いてサイズ・長軸の方向,位置情報の収集を行った.さらに,密度および年代測定用試料採取を行った.その結果,奄美大島や喜界島には,台風の高波で打ち上がった巨礫は存在するものの,津波で打ち上げられた巨礫が観察されないことなどがわかった. また,水深が浅いリーフ地形の場所(干潮時の水深が約50cm未満で,徒歩で調査できる場所)においては,GPS測量機器を用いて地形測量を行った.調査は海岸線に直交する方向に複数測線で行い,取得データを地理情報システム(GIS)上で補間することにより,面的地形データを取得した.一方,新たに導入した測深器を用いて,ごく浅海域(水深10m未満)における深度測量を実施した,まず,測深器の精度検証を行ったうえで,石垣島伊原間地域のリーフ地形を対象に調査を行い,小型ボートが侵入可能な水深50cm程度の場所でも測深が可能であることがわかった.そして,実測データとよく合い,サンゴ礁地形のような複雑な地形でも水深の計測が可能であることを確認した.そこで,同地域を対象に面的に測深を行い,リーフ地形データの取得を行った. こうした現地調査により,対象地域の巨礫分布データと地形データという,数値計算を行う上での基礎情報を取得することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,現地調査を行って巨礫分布データを取得することと巨礫分布域の高精度地形データを取得することを主目的としていた.特に,新たに導入したGPS測量機器と測深器を用いて,通常測量が困難な浅海域のリーフ内で測量を行うことが可能となった.こうした点で,当初計画に概ね沿って順調に進展していると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
巨礫分布データと地形データが得られた地域については,今後巨礫移動モデルを組み込んだ津波遡上計算を実施する予定である.また,2011年東北地方太平洋沖地震津波以降,海溝沿いで発生する巨大地震・津波に関する研究の重要性が高まっている現状を踏まえ,本研究でも琉球海溝沿いの地域に特に重点を置いて,調査と数値計算を実施していく予定である.
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