2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23684045
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
薮下 彰啓 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70371151)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙化学 / 化学物理 / 光化学反応 / 天文学 / 星間化学 |
Research Abstract |
星間空間での分子の生成は、気相反応と星間塵表面反応が考えられている。星間塵の表面は氷で覆われており、紫外光が照射されると光反応が進行する。氷表面光反応として基本的なものの一つに水素原子の脱離反応がある。本研究では氷に真空紫外光を照射し、脱離してくる水素原子の飛行時間分布を測定して水素原子脱離ダイナミクスを調べた。 超高真空チャンバー内で8 Kに冷却した白金基板上にアモルファス氷と多結晶氷を作成した。それぞれの氷の状態は赤外反射吸収分光法により確認した。各々の氷薄膜に光分解用パルスレーザー光を照射し、脱離した水素原子を共鳴多光子イオン化して、飛行時間型質量分析計で測定した。得られた水素原子の飛行時間分布はMaxwell-Boltzmann (M-B)分布を仮定してフィッティングした。 アモルファス氷の光分解によって脱離した水素原子の飛行時間分布は平均並進温度4750 K (A)、625 K (B)、100 K (C)の3成分であった。多結晶氷も同じ3成分であるが、その比は異なっていた。成分(A)は氷薄膜の最表面に存在する水分子が光分解して直接的に脱離した水素原子であり、成分(B)は氷表面数層のバルク層から脱離した水素原子である。成分(B)より並進温度の低い成分 (C)は、バルク層のさらに深い位置から脱離した水素原子であることがわかった。また、水素原子の脱離量や、氷表面とバルク層から脱離する割合は氷温度と氷構造に依存することが明らかになった。 低温環境下での氷表面ならびにバルク層からの水素原子脱離ダイナミクスを明らかにした。氷光分解の理論計算ではさらに高エネルギーの脱離水素原子成分が得られたが、それ以外の表面脱離温度の分布は実験結果とおおむね良く一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験と理論計算により8 Kという低温での氷の光分解による水素原子脱離ダイナミクスを明らかにすることができた。星間塵氷に多く含まれている物質である二酸化炭素/水混合氷の光化学反応機構についての研究を進めている。おおむね研究実施計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで順調に研究が進んでおり、引き続き計画通りに推進する。来年度は実験装置を移設する必要があるため、実験できない期間が生じてしまう。研究実施計画が遅れないように、適切なタイミングで速やかに移設が行えるよう計画する。
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