2012 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質を含む生体膜モデル反応場での脂質分子配向および反応活性の制御と検出
Project/Area Number |
23685003
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
手老 龍吾 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, テニュアトラック助教 (40390679)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 脂質 / 表面・界面物性 |
Research Abstract |
本研究課題では、支持平面脂質二重膜(SLB)にタンパク質を導入することで真に生体膜モデル反応場として機能する人工脂質膜系を構築し、膜内の脂質およびタンパク質の分子配向と反応活性を検出・制御することを目的としている。そのために必要な3つの要素技術の開発に平成24年度も引き続き取り組んだ:①SLB上でのタンパク質反応のその場観察、②脂質膜内の一分子蛍光観察と分子配向計測のための蛍光デフォーカスイメージング(FDI)に必要な光学系の改良、③分子配向制御のための電場印加用基板上へのSLB形成。 ①膜変形モジュールタンパク質のF-BARをphosphatidylcholine (PC)+phosphatidylinositol (PI)-SLB上に添加し、SLB上でのF-BAR自己組織化過程のその場観察を行った。マイカ上に形成したPI+PC-SLB上には深さ約0.9 nmのdepletionドメインが形成された。F-BARはこのドメイン上へと優先的に吸着し、ドメイン内への吸着が飽和した後にドメイン外のSLB上にF-BARの2次元ドメインが成長した。F-BARの優先吸着がおきたことと、2種類の蛍光標識脂質(BODIPY-H-PC、DiI)を用いての蛍光褪色後回復(FRAP)の結果から、depletionドメインがPIリッチな低流動相であることが考えられる。 ②FDI観察においては通常の蛍光観察よりも高輝度の照明が必要であり、また、FDI像の解析には視野内で均一分布の励起光が必要である。新規に購入した高輝度レーザー光源を用いて光学系の改良を行っている。 ③電極材料としてグラフェン酸化物(GO)および還元GO上へのSLB形成および還元度合の影響について詳細に検討した。また、電場印加の可能な基板としてCMOS pHセンサーを用いることとし、センサー表面上へのPC-SLB形成方法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①SLB上でのF-BAR自己組織化反応の直接観察については、マイカ上のSLB中に存在する膜内微小ドメインがF-BAR自己組織化の起点として働くという新規現象を見出した。②1分子蛍光観察とFDIについては平成24年度に購入した励起光源を用いて、観察に必要な高輝度照明のための光学系を構築中である。③のために本学で独自に開発されたCMOS pHセンサー上へSLB形成を行う条件を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も上記①~③の小課題を発展させ、それぞれで得られた知見と要素技術を統合することを目指す。①では由来となるタンパク質が異なるF-BARドメインは脂質微小管形成の反応過程が異なることが示唆されており、その機構と膜内微小ドメインとの関わりを明らかにする。②1分子蛍光観察ではFDIと高速観察を組み合わせることで、PI+PC-SLB中に現れる微小ドメインの物性および内部での分子配向を明らかにする。③グラフェンおよびCMOSセンサーデバイス上へPI+PC-SLBを形成し、電場印加による分子配向および膜内ドメイン状態を変調する。①、②で得られた結果から、PI+PC-SLB内ドメインの中での分子状態とF-BAR自己組織化反応、およびF-BAR由来による反応機構の相違の関連を明らかにする。さらに③と組み合わせて膜内分子の配向変化とF-BAR反応の関連について詳細を調べる。③のpHセンサー上へのSLB形成はさらに、膜電位などSLBの電気的物性の計測へと発展することができると期待できる。
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Research Products
(13 results)