2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規な含高周期典型元素d-π電子共役系の構築と機能に関する基礎研究
Project/Area Number |
23685010
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70362390)
|
Keywords | 有機金属化学 / 典型元素 / フェロセン / d-π電子系 / リチオ化 / 根岸カップリング / ヨードフェロセン / 立体保護 |
Research Abstract |
本研究は、遷移金属のd電子系を高周期典型元素π電子系で架橋した新規なd-π電子系の構築とその物性解明を行い、典型元素π電子系と遷移金属元素の相乗効果の解明を目的としている。しかし、P=Pなどに代表される高周期典型元素π電子系は、非常に反応活性であるため、安定な化合物として取り扱うためには、かさ高い置換基を導入する必要がある。そこで本年度は、系統的に安定な含高周期典型元素d-π電子系化合物を合成するための置換基として、遷移金属ユニットをフェロセンとし、フェロセンユニットに立体保護能を付与したかさ高いフェロセニルユニットの設計・合成を行った。まず、2,5位にかさ高いアリール基として3,5-ジメチルフェニル基(Dmp基と略記)を有するヨードフェロセン類を合成することとした。フェロセンを出発物質とし、スルポキシド部位の導入につぐオルトリチオ化と根岸カップリング反応を活用することで、2-Dmp-1-S(0)Ph-ferroceneを合成した。次いで、還元・再酸化によりS-0の立体を反転させた後、同様にオルトリチオ化、根岸カップリングを施すことで、2,5-Dmp2-S(0)Ph-ferroceneの合成に成功した。n-BuLiによりスルホ穂キシド部位のリチオ化を行いヨウ素を加えることで、目的とするかさ高いヨードフェロセン2,5-Dmp2-1-iodo-ferroceneを合成することに成功した。X線結晶構造解析の結果、中心が二つのDmp基によって効率よく保護されていることが分かり、十分な立体保護能を有するフェロセニルユニットであることが分かった。さらに、このヨードフェロセンに対しt-BuLiを作用させることで、対応するリチオフェロセンが効率よく発生することが分かり、中心部位に種々の元素が導入可能であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最初の重大な課題は、目的とする高周期典型元素d-π電子系を安定な化合物として系統的に合成・評価するための置換基開発にある。遷移金属ユニットはフェロセンに限られるものの、様々なアリール基を2,5位に導入したヨードフェロセンの合成方法を確立したことにより、今後立体保護能のチューニングも迅速に行うことができる。さらにこのヨウ素部位の金属交換反応も効率よく進行することが確認できているので、今後は種々の元素の導入が容易に行える。基盤となる汎用性の高い置換基開発を一年で達成できたので、おおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
置換基開発を達成できたので、今後は実際に典型元素の導入とπ電子系(不飽和結合)の構築を行う。中心元素の導入及び不飽和結合の構築は、これまでの知識・技術の蓄積が十分活用できるものと考えている。まずは一連の高周期15族元素(P=P、As=As、sb=sb、Bi=Bi)について検討を行い、系統的な知見を得る。その後、14族元素へと展開をはかる。最終的にはフェロセン以外の遷移金属ユニットへと展開する。化合物の安定性に問題があった場合、置換基のかさをあげ、立体保護能を強化した置換基を合成する。合成法はH23年度に確立した合成法をそのまま活用できると考えている。物性評価は、X線結晶構造解析、各種スペクトル解析、電気化学測定等により、詳細に基礎的な知見をまとめることにより行う。
|
Research Products
(23 results)