2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規な含高周期典型元素d-π電子共役系の構築と機能に関する基礎研究
Project/Area Number |
23685010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70362390)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機金属化学 / 典型元素 / フェロセン / d-π電子系 / ジホスフェン / ジスチベン / ジビスムテン / 酸化還元 |
Research Abstract |
本研究は、遷移金属のd電子系を高周期典型元素π電子系で架橋した新規なd-π電子系の構築とその物性解明を行い、典型元素π電子系と遷移金属元素の相乗効果の解明を目的としている。しかし、P=Pなどに代表される高周期典型元素π電子系は、非常に反応活性であるため、安定な化合物として取り扱うためには、かさ高い置換基を導入する必要がある。昨年度、安定な含高周期典型元素d-π電子系化合物を合成するための置換基として合成に成功した、フェロセンユニットに立体保護能を付与したかさ高いフェロセニルユニットを活用して、高周期15族元素π電子系のπスペーサーとしての評価を行うこととした。その結果、P=P, Sb=Sb, Bi=Biユニットで二つのフェロセニルユニットを架橋した初めての含高周期15族元素d-π電子系化合物の合成・単離に成功した。これらの分子構造および酸化還元挙動を解明することで、高周期15族元素π電子系は、それぞれの元素の特性が反映されたユニークなπスペーサーとして機能することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最初の重大な課題は、目的とする高周期典型元素d-π電子系を安定な化合物として系統的に合成・評価するための置換基開発にある。遷移金属ユニットはフェロセンに限られるものの、様々なアリール基を2,5位に導入したヨードフェロセンの合成方法を確立し、すでに二種類のかさ高いフェロセニルユニットの開発に成功し、一連の高周期15族元素が導入可能であることを実証している。また合成が困難とされているリン、アンチモン、ビスマスといった一連の15族元素間の二重結合化合物をもつd-π電子系の創製にも成功し、高周期15族元素π電子系のそれぞれの元素特性を反映したπスペーサーとしての機能を明らかとした。今後の基盤となる一般性の高い知見を二年目で得ることができたという点で、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
高周期15族元素πスペーサーの機能を明らかとしたので、次に、これまで得たかさ高いフェロセニルユニットをモチーフとした研究展開として、高周期14族元素へと展開する。すなわち、これらふたつのフェロセニルユニットを、ケイ素やゲルマニウム、スズ、鉛といった高周期14族元素のπ電子系で架橋した新規d-π電子系を構築し、その酸化還元挙動と高周期14族元素π電子系のπスペーサーとしての機能を系統的に明らかとする。このかさ高いフェロセニルユニットの立体保護能は、すでにBiといった第六周期元素π電子系の安定化にも十分対応できるほど優れたものであることが実証できているので、14族元素の系でも一連のπ電子系が構築可能であると期待できる。これまでの知見を総合して考察し、高周期典型元素の、d-π電子系におけるπスペーサーとしての機能について系統的な知見を得る。
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Research Products
(17 results)