2011 Fiscal Year Annual Research Report
キラル有機イオン対の構造制御を基盤とした触媒的分子変換プロセスの開発
Project/Area Number |
23685018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浦口 大輔 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70426328)
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Keywords | 有機分子触媒 / アンモニウムベタイン / キラル超分子イオン対 |
Research Abstract |
有機カチオンと有機アニオンを組み合わせる方法として、大きく(1)分子間イオン対、(2)分子内イオン対の二つを想定して研究を行った。以下に、それぞれのイオン対についての研究成果を示す。 (1) 研究の端緒として、P-スピロ型アミノホスホニウムイオンとフェノール等の有機イオンを組み合わせた超分子型イオン対を取り上げた。これまでにない反応溶媒の極性に依存した超分子会合体の振る舞いを見出し、その詳細を低温NMR測定により明らかにした。さらに、ここで選択的に発生させた超分子型イオン対触媒がその構造ならではの触媒作用を示すことを利用し、2位無置換アズラクトンの共役付加反応を高立体選択的に実現した。また、本反応生成物が合成化学的に有用な各種アミノカルボニル化合物へと、容易に誘導できることも合わせて示した。 これまで利用してきた塩基性アニオンに加えて、キラルな非配位性アニオンのデザイン・合成に取り組んだ。アリールアミノホスホニウムイオンが持つ非配位性のテトラアリールボレートイオンを独自に設計したキラルアニオンに置き換えることを念頭に、軸不斉を持つ新規ボレートアニオンの創製を目的として研究を行い、実際にモデルとなるいくつかのボレートイオンを合成した。 (2) キラルアンモニウムベタインを鍵構造とする分子変換を行った。アンモニウムアリールオキシドが示す二官能性塩基触媒としての機能を、レトロアルドール反応の競合がしばしば問題となる形式のアルドール反応により評価し、中程度の立体選択性の発現に成功した。また、非共役型ニトロオレフィンを求核種とするアザHenry反応を高立体選択的に実現した。加えて、ベタイン分子が示す従来にないイオン性求核触媒機能の特性を生かした反応系として、オキシインドール誘導体を用いる多成分連結型のアルドール反応を設計し、実際に立体および化学選択性の高いレベルでの制御を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に関してはおおむね順調に進展し、キラルホスホニウムカチオンとアニオンから成る会合状態の制御法に関する新たな知見を見出すと共に、キラルアンモニウムベタインに特徴的な反応システムを確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的に向かっておおむね順調に研究が展開しており、計画の変更や修正すべき問題点は特にない。 継続的に取り組んでいる触媒系について、発展的展開を目指した触媒分子構造修飾に早い時期に取り組み、さらに研究を加速していきたいと考えている。また、新たに構築予定の触媒システムについて、前年度に合成した分子の反応系における振る舞いを理解するために分光学的解析を行い、ここから得られた知見を反応系へフィードバックできる体制を取る。
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Research Products
(10 results)