2012 Fiscal Year Annual Research Report
キラル有機イオン対の構造制御を基盤とした触媒的分子変換プロセスの開発
Project/Area Number |
23685018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浦口 大輔 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70426328)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 不斉合成 / アンモニウムベタイン / 超分子イオン対 |
Research Abstract |
本研究は、有機カチオンと有機アニオンから成るイオン対が協奏的に働く触媒系を創出し、それぞれのイオン単独での触媒作用を超える機能発現につなげることで新規反応を開発することを目指して行った。分子構造を指標に有機カチオンと有機アニオンの関係を、大きく(1)分子間イオン対、(2)分子内イオン対の二つに分けて研究を展開した。 (1) P-スピロ型アミノホスホニウムイオンとエノラートのような求核的アニオンから成るイオン対に、フェノール類等を加えることで自発的に形成する超分子型イオン対の機能評価を行った。具体的には、6位にアリール置換基を持つジエニルアシルピロールへのビニロガス型Michael付加をモデルに、位置および立体選択性と添加するフェノール類の構造に明確な相関が現れることを実証した。一方、キラルアニオンを持つイオン対型触媒の創製においては、いくつかの新たな分子構造を生み出すことに成功した。 (2) アンモニウムアリールオキシドが示す二官能性塩基触媒としての機能を利用した、非共役型ニトロオレフィンを求核種とするアザHenry反応を高立体選択的に実現し、立体的に込み合った連続立体中心の新しい構築法を提案した。さらに、ここで得られた知見を基に、アザHenry反応を用いた非対称型1,2-ジフェニルエチレンジアミンの不斉合成を高立体選択的に実現し、生理活性化合物やキラル配位子として有用な分子構造を簡便に与える手法として確立した。また、アンモニウムベタインの求核触媒機能に関する展開として、アシルヘテロアリールへの求核攻撃を端緒とする反応システムが機能することを見出した。しかし、立体選択性の発現は中程度に止まり、触媒の構造修飾による改善が来年度の課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位置・ジアステレオ・エナンチオの3つの選択性の制御が求められるビニロガス型Michael付加反応を、超分子型イオン対を利用することで初めて実現した。本成果は、本研究提案の妥当性と力量を実証するものと位置付けられる。また、分子間イオン対であるアンモニウムベタインを利用した触媒システムでは、新規反応系の開発に加えて、得られた知見に基づく合成化学的に価値のあるプロセスの確立へと展開しており、十分な進展がみられている。
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Strategy for Future Research Activity |
超分子イオン対型触媒を用いるシステムでは、現在の流れに沿った研究に加え、分子会合が形作る構造をより積極的に利用した反応開発に着手する。すなわち、多官能性化合物を構成素子とする超分子イオンポリマーを合成し、機能と構造の相関について研究を展開したい。一方、ベタイン分子を使った分子変換では、これまで利用し難かった不安定中間体を経る反応を、簡便な操作で実現できる触媒システムを構築する。
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Research Products
(4 results)