Research Abstract |
本応募課題研究では,これまで関心を集めながらも研究が遅れている「ヘテログラフェン」に着目し,そのボトム・アップ合成を可能とするタンデムヘテロFriedel-Crafts反応と多重クロスカップリング反応の開発を行う.一連の研究で得られる化合物群は,ヘテログラフェンの部分構造に相当する拡張π共役系を有しており,その構造解析と物性測定を通じて,これまで理論化学的予測に留まっていたヘテログラフェンの本質的な理解を目指す.これら基礎研究に加えて,機能性有磯材料としての応用研究を行うことで,「ヘテログラフェンの化学」を一つの研究分野として確立することが本研究の目標である.今年度は,タンデムポラFriedel-Crafts反応が進行することを見出し,種々のBN縮環拡張π共役化合物の集積合成法を確立した.合成した化合物の中で,4b-アザ-12b-ボラジベンゾ[g,p]クリセンに関し,TRMC(Time-Resolved Microwave Conductivity)測定を行ったところ,0.07cm2V-1s-1という比較的高い電荷移動度を示すことが明らかとなった.本手法は高い応用性を有しており,二つのBN縮環構造を有した8b,19b-ジアザ-11b,22b-ジポラヘキサベンゾ[a,c,fg,j,1,op]テトラセンの合成も可能である.これらは、電荷輸送特性に加えて,発光特性も示すことから,現在,有機エレクトロニクスにおける新材料としての応用研究を進めている.
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