2012 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-炭素、炭素-酸素及び炭素-ケイ素結合の触媒的変換反応の開発
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23685021
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳶巣 守 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60403143)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 炭素-炭素結合活性化 / 炭素-リン結合活性化 / 均一系触媒 |
Research Abstract |
シアノ基は有機化学における基本的な官能基の一つであるが、その変換反応は炭素-窒素3重結合への付加反応、α位の炭素-水素結合の脱プロトン化反応、あるいはニトリル窒素の求核性を利用する反応に限られてきた。一方、遷移金属錯体を用いることで、ニトリルのα炭素とシアノ基間の結合(炭素-シアノ結合)の切断をともなった変換反応が近年、盛んに研究されてきた。本研究では、ケイ素やホウ素配位子を持ったロジウム錯体の特徴的な分極を利用することで、従来の酸化的付加とは異なる機構による炭素―シアノ結合の活性化反応を検討してきた。今回、2-フェノキシベンゾニトリルの誘導体をロジウム触媒とジシランと反応させた場合、シアノ基が切断され、その位置でシリル化された予想生成物に加えて、シリル化が2'位で進行した生成物も得られることがわかった。この結果は、中間体であるアリールロジウム種が1,5-転位するという極めて珍しい素反応を含む反応であることを明らかとした。 炭素―ヘテロ原子結合の切断反応による触媒的なヘテロール合成反応開発として、環状リン化合物であるホスホールの触媒的合成反応を検討した。2'-ブロモ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)ジフェニルホスフィンを基質にパラジウム触媒とヒドロシランの存在下に加熱することで、炭素―リン結合の切断をともなってホスホールが生成することを見出した。さらに驚くことに、より単純な原料である、ブロモ基を持たないビフェニルホスフィンを原料として用い、パラジウム触媒存在下に加熱するだけで同様にホスホールが生成することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、従来ほとんど活用されてこなかった不活性結合を切断して、有機合成へと利用する反応を開発することである。ボリルあるいはシリルロジウムを用いた不活性な炭素-炭素結合活性化に関しては、さらに珍しいロジウムの1,5-転位と複合したユニークな反応の開発により、本手法の一般性を示すことができた。 近接効果を利用したヘテロール合成に関しては、これまで達成したケイ素、ゲルマニウムに加えて、全く化学的性質の異なるリン原子でも触媒金属を変化させることにより、反応の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
不活性結合の切断を経る新規反応を数々と開発することができた。今後は、その反応機構を実験的および理論化学的に、より詳細に解明することで、真の反応理解を目指すともに、不活性結合切断反応開発のための指導原理を確立していく。
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