2011 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化を利用した高分子『トポロジー効果』の増幅
Project/Area Number |
23685022
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 拓矢 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (30525986)
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Keywords | 環状高分子 / 両親媒性 / ブロック共重合体 / トポロジー効果 |
Research Abstract |
環状高分子は、主鎖末端が存在しないため、同一の組成・分子量であっても『かたち』(トポロジー)の違いから直鎖状高分子とは異なった物性を示す。しかし、『かたち』に基づく物性差異(トポロジー効果)は微少なものであり、特定の分野の学術的興味の範疇を超えないと考えられてきた。そこで、本研究は直鎖状および環状の高分子を自己組織化することで分子集合体とし、トポロジー効果の増幅によって機能材料の開発を行った。また、その増幅メカニズムの解明を行い、高分子トポロジー科学と超分子化学の融合による新規複合分野の開拓を目指した。 我々が発見したトポロジー効果は学術的にも産業的にも非常興味深く、様々な領域において応用展開が期待される現象ではあるが、現在のところその具体的なメカニズムは解明されていない。そこで、本研究課題において、まず、速度論的要因および熱力学的要因の調査からメカニズムの解明を行い、本方法論の基盤となる知見を蓄えることで新規融合分野の基礎の確立を行った。そして、分子量、親水・疎水セグメント比およびポリマー主鎖の変更を行い、棒状ミセルやベシクルなどの複雑な自己組織化構造を構築し、それらにおける『トポロジー効果』を調査した。 また、本新規分子システムのアプリケーションの探索として環状高分子が形成するミセルの特性を活かし、ドラッグデリバリーシステムに向けた温度応答型のゲスト分子放出およびミセル触媒としての応用を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の成果をPolymer Chemistryに論文発表した。(Baba,E.;Honda,S.;^*Yamamoto,T.;^*Tezuka,YATRP-RCM Polymer Cyclization:Synthesis of Amphiphilic Cyclic Polystyrene-b-Poly(Ethylene Oxide)Copolymers,Polym.Chem.2012,3,in press.) さらに、招待講演を含む多数の学会発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に関し、熱安定性と同様に直鎖状と環状の高分子を混合することで塩析濃度の制御にも成功している。これらの結果から、化学構造や分子量が同じにもかかわらず高分子の『かたち』によってミセルの水和状態が異なると考えられる。そこで、まず固体DSCを用いて、それぞれの(ミセルを形成していない)高分子が持つ水和水の量や親水部に対する相互作用の強さを調べる。さらに溶液DSCを使用し、ミセルが崩壊し溶液が懸濁する際の熱量変化を測定することで、ミセルを形成していない状態と比較し、自己組織化によってどの様な増幅効果が発現するかを調査する。一方、塩析に関して、イオン価数の変化に加えイオンサイズ依存性(LiCl vs.CsI)や疎水部であるミセルコアに接近しやすいN(Bu)_4OTsなどを使用し包括的に条件を検討する。また、一般的にコロイド粒子は帯電していると静電反発により分散状態で安定化される。この影響を調査するため、電解質溶液中でのミセルのゼータ電位測定を行う。そして、これら実験を基に熱力学的要因を明らかにする
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