2013 Fiscal Year Annual Research Report
無機半導体常温印刷デバイスを目指した導電性無機ナノ粒子の創製
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23685028
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金原 正幸 岡山大学, その他部局等, 助教 (40375415)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノインク / フタロシアニン / π接合 |
Research Abstract |
インク状にした機能性材料の印刷によって電子素子を作製するプリンテッドエレクトロニクスは、低コスト・大面積の新しい半導体素子形成技術として近年注目を集めています。さらにプラスチックや紙等のフレキシブルな基板に印刷することができれば、ロールツーロール印刷による大量生産や、様々なアプリケーションへの展開が期待できます。しかし従来のプリンテッドエレクトロニクスは、100~200℃以上の高温プロセスを必要とし、プラスチックや紙等の非耐熱性基板への印刷は不可能とされてきました。我々は、室温で塗布乾燥するだけで固体金属と同レベルの導電性を有する金属ナノインクの開発に成功しました。ナノメートルサイズの金属粒子に芳香族性の分子フタロシアニンを配位させ、インクに分散させることにより、室温導電性が発現しました。これにより非耐熱性基板への電極形成が可能になりました。基板の表面を薄い撥水性ポリマーの膜で覆い、光学的手法で形成した親水性のパターンに金属ナノインクを選択的に塗布して、精密な電極を形成する新しいプロセスを開発しました。この1℃の昇温も必要としないプロセスにより、フレキシブルな基板への精密な電極印刷が可能になりました。なお、この室温プロセスによる有機薄膜トランジスタが、性能面においても高温プロセスによる従来品を大きく上回ることを確認しました。本研究で開発した室温プリンテッドエレクトロニクス技術により、従来、熱による変形で不可能とされてきたフレキシブル基板への電子素子の印刷が可能になるだけでなく、紙や布等のこれまでプリンテッドエレクトロニクスの対象として考えられなかった材料への印刷が可能になり、さらには生体材料のような環境変化に極めて弱いものの表面にも電子素子を作製することも可能であるため、医療やバイオエレクトロニクス等、様々な分野への応用に繋がるものと期待できます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
近い将来、太陽電池や大型ディスプレイ等がプリンターを用いた印刷によって作られるようになります。このようなもの造りはプリンテッド・エレクトロニクスと呼ばれ、実現すれば今より遥かに安く大量に製品を供給できます。そのためには低価格プラスチック基板を用いる必要があります。プラスチックは耐熱性が乏しく、高温が必要なプロセスには用いることができません。これまで、電気回路を形成する印刷材料は必ず120℃以上の高温が必要でした。我々は世界で初めて、一切の後処理無しに室温で塗って乾燥させるだけで電気回路を描画可能な金属ナノ粒子の創製に成功しました。研究開始当初に合成できた材料は金ナノインクのみ、抵抗率は1 mΩcm程度でした。本研究で検討を行った結果、今では焼成フリー金ナノインクにおいて、9.0 μΩcmのバルク金と同じオーダーの抵抗率を実現しました。常温プロセスで一桁μΩcmは驚きです。また、銀ナノインクの合成にも成功し、30 μΩcmの非常に低い抵抗率を達成しました。いずれも、室温プロセス可能な材料としては世界最高の特性を有するに至りました。また、1℃の昇温も必要としないプロセスにより、フレキシブルな基板への精密な電極印刷が可能になりました。本技術を用いて、全室温プロセスによる有機薄膜トランジスタを作成し、性能面においても高温プロセスによる従来品を大きく上回ることを確認しました。移動度は7.9 cm^2/V・sであり、ディスプレイ用トランジスタとして有名なIGZOに迫る値です。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、確立したトランジスタ作成技術を用いて、真空を一切用いない液晶ディスプレイを作成する。従来の真空プロセスでは、大面積基板に集積化トランジスタを形成できない。これは装置のサイズ制限があるためである。一方、我々のキーテクノロジーである、室温印刷のみで集積化トランジスタを形成する基盤技術を用いた場合、真空装置が不要なため、どのようなサイズの基板に対してもトランジスタを印刷形成し、ディスプレイを製造できる。大画面デジタルサイネージでは、画面の小さな通常のディスプレイに比較して画素サイズが大きくても問題ないため、トランジスタ形成においても極端に精密な印刷技術は不要である。つまり、現有のパターニング技術で十分に対応できる。従来からの確立された技術のごく一部をプリンテッドエレクトロニクスで代替することによって、従来不可能であったものづくりを可能とし、実現性および得られる効果の両面が高い次元で両立する。 室温印刷での集積化トランジスタ形成を基盤技術とし、本年度はまずA4サイズの試作ディスプレイ製造技術を開発する。この試作ディスプレイは未来の大画面デジタルサイネージを視野に入れたものであり、製造技術のすべてが5年後の大量生産開始とリンクする必要がある。これには、A4サイズでのトランジスタ印刷パターニングだけでなく、従来の液晶ディスプレイ製造技術との融合および信頼性試験が必須となる。本年度は、トランジスタ印刷形成のための有機半導体材料の探索および信頼性試験を行った上で、プリンテッドエレクトロニクスと従来の確立された液晶ディスプレイ製造技術を融合させ、印刷トランジスタを用いたモノクロディスプレイの試作を行う。
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Research Products
(4 results)