2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞オルガネラ局在性を有する金属イオン蛍光プローブの開発と一細胞多重染色への応用
Project/Area Number |
23685039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
多喜 正泰 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (70378850)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 亜鉛蛍光プローブ / 銅蛍光プローブ / 蛍光イメージング / オルガネラ局在能 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
ミトコンドリア局在能を有する亜鉛および銅一価蛍光プローブの開発し,各プローブの機能評価および生細胞を用いた蛍光イメージングを行った。具体的な成果は以下の通りである。 ①共有結合可能なミトコンドリア局在型亜鉛蛍光プローブの開発 内在性チオールと共有結合可能な官能基であるクロロアセトアミド基を有するローダミンと対象化合物であるアセトアミド型のローダミン蛍光色素をそれぞれ合成し,ミトコンドリアの染色を行った。ミトコンドリア膜電位の脱分極剤であるCCCPを添加したところ,前者ではほとんど変化しなかったのに対し,後者では細胞質への拡散に伴う蛍光強度の減衰が確認された。すなわち,クロロアセトアミド基はミトコンドリア膜に発現しているタンパク質チオールと共有結合していることが明らかとなった。次に,ミトコンドリアをラベル化後,さらに細胞質に拡散する別の亜鉛蛍光プローブを用いて共染色を行った。この細胞に対してカルシウムアゴニストを添加したところ,ミトコンドリア近傍の蛍光強度がわずかに減少し,同時に細胞質中の亜鉛イオン濃度上昇に伴う蛍光強度の増大が観測された。すなわち,ミトコンドリアから亜鉛イオンが放出する様子をリアルタイムで観測することに成功した。 ②スピロ環の開閉反応を利用した銅一価蛍光プローブの開発 ロドール蛍光色素のフェノール水酸基をアルキル化するとスピロ環を形成し無蛍光物質になることが知られている。そこで,ロドールの酸素原子に銅イオン反応部位であるTPA配位子を,窒素原子にミトコンドリア局在性を有するTPP部位を導入しした新規銅一価蛍光プローブを合成した。グルタチオン存在下で銅イオンを添加したところ,100倍以上もの蛍光増大が認められ,銅一価プローブとして機能することを確認した。同様の蛍光増大は細胞内ミトコンドリアにおいても認められ,ミトコンドリアに存在する銅イオンのイメージングに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜鉛イオンおよび銅イオンについて,それぞれミトコンドリア局在型の蛍光プローブを計画通りに合成することができ,その有用性を検証することができた。すなわち当初研究目的に従い,おおむね順調に進展していると言える。いずれの化合物も大変興味深い性質を示し,現在学術論文を執筆しているところである。また亜鉛イオンについては,内在性亜鉛のイメージングに成功し,細胞質へ放出される過程をリアルタイムで追跡することができた。この過程をより詳細に検討することにより,シグナル伝達物質としての機能評価が可能になる。銅イオンプローブについては,当初計画・設計していた化合物の機能が予想よりも低かったため,ロドール型へと変更したところ,高い銅イオン検出能を有するプローブを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①内在性亜鉛イオンの生理的役割の解明 昨年度合成した亜鉛蛍光プローブを用いて,内在性亜鉛イオンの生理的役割について検討する。特に,亜鉛イオン濃度変化とカルシウム濃度変化の相関関係に着目し,シグナル伝達機構における亜鉛イオンの役割を明らかにする。 ②ゴルジ体および小胞体局在型亜鉛蛍光プローブの開発 ローダミン化合物の両端窒素原子に対し,それぞれオルガネラ誘導基およびクロロアセトアミド基を導入することにより,ターゲットオルガネラに局在後,共有結合によりラベル化することが可能となる。これが達成できれば亜鉛イオンの機能解明研究が飛躍的に発展すると考える。 ③銅イオンの貯蔵濃度の算出 ミトコンドリアには比較的高濃度の銅イオンプールが存在していると考えられているが,その濃度については明らかにされていない。ミトコンドリア中における蛍光プローブの強度と銅イオン濃度の相関関係を明らかにし,細胞培養条件による銅イオン集積能の違いを評価する。
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Research Products
(10 results)