2012 Fiscal Year Annual Research Report
集積型有機発光デバイスの導波路自己形成技術による作製とμチップ型光学分析への応用
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23685044
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山下 兼一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (00346115)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光導波路 / 有機光デバイス / システムオンチップ / 光物性 / 光誘起吸収分光 |
Research Abstract |
本研究では、通常は光学ベンチ上で行われるべき様々な光学評価・分析を簡易チップ上で実現することを目指し、有機材料による微細光源を光回路上へ集積作製する技術を確立することを目的としている。前年度は、これまでに開発を行ってきた自己形成活性導波路技術を発展させることによる集積型光源デバイス作製技術の確立に注力し、広帯域発光型光源素子と単一波長発振型レーザ素子の集積作製を行った。その成果を受けて今年度では、実際にその光源素子を搭載したポリマー導波路型の光学分析チップを試作し、ラベルフリーの分光測定技術への応用を検討した。 ポリマー導波路は厚膜レジストであるSU-8をフォトリソグラフィで微細加工することにより作製した。これにより、酸化膜付シリコン基板上に光導波路とマイクロ流路の集積化を行った。このチップ上に自己形成活性導波路による広帯域微細光源を集積作製した。光源素子の発光、及び導波路への光結合特性を評価したところ、400~700nmの可視光領域全体を網羅する発光が観測され、光導波路内でのプローブ光源として用いることが可能であることを示した。 さらに、クロロフィルをテストサンプルとしたオンチップ光誘起吸収分光を検討した。クロロフィルのDMAc溶液をマイクロ流路内に充填封入し、パルス駆動の紫外発光ダイオードを光源素子及びテストサンプルに同期的に照射した。光源素子にドープされている発光色素はナノ秒オーダーの発光寿命を持っているため、光源素子からはパルス状の広帯域発光が出力される。これにより、光励起下における透過光測定が可能となる。測定の結果、光励起ラジカル状態にあるクロロフィル分子特有の遷移信号が観測され、光作用長を増加させることにより高感度化できることを示した。また、励起光パルスの時間幅を変化させることにより、励起状態から基底状態への緩和時間測定が可能であることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書で述べていた通り、生体物質であるクロロフィルをテストサンプルとして、ラベルフリー計測の一つの手段である光誘起吸収(PIA)測定を実証した。また、変調分光型、ポンプ・アンド・プローブ型のいずれにおいてもPIA信号強度の時間応答特性評価が原理的に可能であることを示した。また、単一モード発振型の自己形成活性導波路素子もコア径の微細化により達成することができており、おおむね当初計画が達成できていると言える。一方、ポンプ・アンド・プローブ型でのPIA測定ではプローブ光パルスに対しては小さいデューティでの測定が必要となるため、自己形成活性導波路による集積型光源では出力光強度が不足であることがわかった。この解決のためには、この光源素子のドープ色素を再検討して高輝度化を目指すか、光源素子のデザインそのものを再検討することが必要であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、オンチップ光誘起吸収測定の最適化に重点をおく。まず、現状の問題となっているプローブ光強度不足に関しては、自己形成活性導波路にドープする色素を再検討するとともに、コア径の大きな導波路として作製することを検討する。導波路自己形成メカニズムに関するこれまでの知見を活かし、ファイバを用いた露光ではなく、対物レンズによる集光露光を採用してその形状を自在に制御することを試みる。また、光源素子としては自己形成活性導波路以外にもインプリント手法によるリッジ型色素ドープ導波路などを検討し、十分なプローブ光強度を確保することを目指す。 また、これと併せて導波路チップ自体の最適化も行う。これまではSU-8を微細加工したチップを使用していたが、微細加工SU-8をモールドとしてインプリント作製した微細加工ポリジメチルシロキサン(PDMS)を平面基板上へ貼りつける手法へと切り替える。PDMSの微細加工は溝型で作製しておき、ここに高屈折率の光硬化性樹脂を充填、硬化させることにより導波コアとする。これにより、クラッドが付与されたより導波路構造で作製することが容易となり、サンプル量産の歩留まりも大きく改善される。
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Research Products
(11 results)