2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23685047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 優実 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00436619)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | セラミックス / イオン結晶 / 誘電体物性 / 表面・界面物性 / 新エネルギー |
Research Abstract |
最近、エレクトレットと呼ばれる安定静電気保持材料を発電素子として振動から電気を取り出す静電式振動発電システムが注目されている。本課題では、既存のポリマーエレクトレット式装置より1桁以上高い出力を実現すべく、高密度な表面電荷を半永久的に保持し得る新たな「イオン伝導性セラミックエレクトレット」の開発を目指すこととした。 本年度は、昨年度エレクトレット基材として選定したオキシハイドロキシアパタイト(Ca10[PO4]6[O,OH]2、導電率:400~800 ℃で10-9~10-5 Scm-1、活性化エネルギー:1.3 eV、以降OHAと表記)を対象として、エレクトレット作成時の印加電圧と、この処理によってOHAに付与された蓄積電荷量および表面電位の関係を詳細に評価した。結果、OHAの蓄積電荷量は印加電圧が増加するにつれて直線的に増加してゆくものの、蓄積電荷の極性は、陽極処理面で正、陰極処理面で負の値をとっていることが分かった。これはイオン伝導による分極形成から予想される結果とは逆の傾向であり、おそらく、分極処理時に電極から試料表面への電荷注入が生じたものと考えられた。一方、表面電位についても、極性は、陽極処理面で正、陰極処理面で負の値となっていた。ただし、印加電圧の変化に対する表面電位の変化は蓄積電荷量のそれとは異なっており、一定の印加電圧レベルを超えると飽和値に至ることが示された。この挙動の違いの原因は不明であり、今後、より詳細な解析を行ってゆく必要がある。なお、エレクトレット化処理直後に±1000 V超の表面電位を示したOHAエレクトレットを対象として表面電位値の経時変化を追跡したところ、乾燥雰囲気下において現在までに、約4か月にわたって初期の値を保持しつづけていることが確認できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度からの継続課題であるエレクトレット開発については、既存のポリマーエレクトレットを超える特性を有するOHAエレクトレットの作製技術を確立したという観点において、当初計画以上に順調に進んでいると言える。また、24年度に着手することを計画していた発電試験に関しても、まだ測定データとしては十分に取得できているとは言えないものの、発電試験に必要な計測システムの手配、構築(初期設計から着手し、制御プログラムも独自のものを開発)は終えていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度推進計画 ◇ 設備対応: 振動発電評価システムの拡充 ◇ 継続課題: A・B・C》 エレクトレット開発1・2、単純化振動発電機による発電特性評価等 ◇ 着手課題: D》 単純化振動発電機による発電実証試験、エレクトレット開発2へのフィードバック 前年度身に付けた実用的な装置の作成技術と、課題A、BおよびCの遂行過程で得られた知見を利用してセラミックエレクトレット式小型振動発電機を作成、周波数10~30 Hz、振幅1~2 mmの強制振動条件下での発電実証試験を行う。結果は順次、A、BおよびCのステージにフィードバックし、同一の素子配置を持つフッ素系ポリマーエレクトレット式装置より1桁以上高い出力を年度内に達成する。(微細素子配置が困難な場合、「C」の単純化装置での達成を目指す。) ◇ 総括: 最終報告書作成と対外的情報発信・以降の研究発展に向けた産学ネットワーク形成
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Research Products
(16 results)