2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン伝導性イオン液体ポリマーを用いた新規固体高分子形燃料電池の開発
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23685051
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Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
森永 隆志 鶴岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (30467435)
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Keywords | 複合材料・物性 / 高分子合成 / 高分子構造・物性 / 燃料電池 / ナノ材料 |
Research Abstract |
プロトン伝導性イオン液体モノマー(DEMH-TFSI)のリビングラジカル重合(LRP)は、コスト面で極めて優位性が高い塩化銅/ビピリジン錯体を用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)を第一の候補として検討を行った。 その結果、反応時間の増加に伴う重合溶液の変色が確認され、得られたプロトン伝導性イオン液体ポリマーであるpoly(DEMH-TFSI)の分子量分布も広く、構造が制御されているとは言い難いものであった。原因として、DEMH-TFSI自体が有するBronsted酸性が錯体の酸化還元平衡に予想以上に悪影響を及ぼしたことが考えられる。 そこで、錯体の配位子を配位能力の高いアミン系化合物に変更し、酸化還元平衡が自律的に調整されるARGET機構を重合系に導入したところ、数平均分子量は、重合率に比例して大きくなり、分子量分布指数は1.3以下となった。この結果は、ARGET機構を有するATRPによるDEMH-TFSIの規制重合が可能であり、構造の明確なpoly(DEMH-TFSI)の合成経路の確立を意味するものである。LRP開始基修飾シリカ微粒子を添加した重合系においても同様に、良好なLRP特性を確認した。シリカ微粒子表面へのpoly(DEMH-TFSI)のグラフト密度は1nm^2あたり0.073本であり、生成した複合微粒子の表面は濃厚ブラシ領域に達する高いグラフト密度のpoly(DEMH-TFSI)層を有していることが確認された。 続いて、合成したpoly(DEMH-TFSI)グラフトシリカ微粒子を用いて微粒子積層型固体電解質の創製を試みたところ、アセトニトリルを溶媒とするキャスト製膜法により自立性の固体膜を得ることができた。この膜は固体高分子形燃料電池用の電解質膜として、100℃以上の高温かつ無加湿条件下においても有効に機能することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
事前計画に即した前述の成果に加え、イオン液体モノマーと架橋性モノマーの共重合が本研究の合成経路にも適用可能であることが判明し、複合微粒子に熱架橋性を付与する技術を確立した。この技術は微粒子積層型固体電解質の強度向上と薄膜化に資するものであり、燃料電池の安定した高温駆動および出力向上に繋がる成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した固体電解質について、イオン伝導性測定・各種イオンの拡散係数測定・各種顕微鏡測定による組成解析を行い、その特性を評価する。これらの物性と発電特性は密接な関係にあり、電解質構造設計の最適化の際に重要な知見となる。さらに固体電解質を実際にPEFCに搭載し、その発電性能を評価する。キャスト製膜時のピンホール生成により燃料のクロスオーバーが発生した場合は、PTFE不繊布を支持体とする含浸充填によりPEFC用電解質膜を作成する。
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Research Products
(4 results)