2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規ナノ相分離機構によるネットワーク状高分子ナノファイバーの創成
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23685052
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐光 貞樹 独立行政法人物質・材料研究機構, 高分子材料ユニット, 研究員 (80432350)
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Keywords | 相分離 / ナノファイバー / 結晶化 / メソ多孔体 / ナノ結晶 |
Research Abstract |
研究開始にあたる本年度は、提案した相分離機構の実験的検証とネットワーク状高分子の作製を行なった。検証実験にはモデル高分子としてポリスチレンを用いた。本アイデアの独創性は、ガラス化と冷結晶化に着目した高分子溶液の相分離現象である。そこで、高精度示差走査熱量計を用いて高分子溶液の凍結・融解過程を詳細に調べた。精力的な条件探索の結果、ガラス化(冷結晶化)する高分子濃度と溶媒種類を見出すことに成功し、提案した相分離機構の基本要件が検証できた。続いて、上記の濃度・溶媒条件を用いてネットワーク状高分子の作製に取り組み、走査型電子顕微鏡による構造の直接観察と窒素ガス吸着法による比表面積・細孔分布評価を行なった。具体的な作製手順は次の(1)-(3)である。(1)ポリスチレンの濃厚溶液を液体窒素で急冷することで、高分子溶液全体が凍結したガラス状態を得る。(2)低温のまま大量の貧溶媒を導入し、低温フリーザー中で保持する過程で、溶媒分子の冷結晶化によるナノ結晶相分離を誘起する。(3)引き続き、貧溶媒で溶媒置換することによりナノ相分離構造を固定化する。得られた試料の断面観察により、緻密で連続的につながった高分子ナノファイバーのネットワーク構造を見いだした。さらに、ナノファイバーの直径を画像解析により定量的に評価した。窒素ガス吸着法では、264m^2/gの大きな比表面積が得られ、直径10-50nmのメソ細孔に相当する細孔を多数有していることがわかった。電子顕微鏡観察で得られたナノファイバーの直径分布からみかけの比表面積を見積もると、バルク測定法である窒素ガス吸着法で得られた比表面積とほぼ一致し、ナノファイバー構造がバルク試料全体に分布していることが確認できた。さらに、溶媒の組み合わせ・濃度・凍結保持温度などの作製条件を探索し、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミドなど多種類の汎用高分子からもネットワーク状高分子ナノファイバーの作製に成功した。上記ように、研究計画で提案した相分離メカニズムの一般性が検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に達成した点を列挙する。(1)ポリスチレンを用いて、提案したナノ相分離機構(高分子溶液のガラス化と冷結晶化)を実験的に実証した。(2)ネットワーク状高分子の作製法を確立した。(3)電子顕微鏡による直接観察と窒素吸着法による細孔評価を行ない、ナノ多孔体の構造評価(ファイバー直径分布・比表面積・細孔分布の評価)を実施した。(4)ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルイミドなど多種類の汎用高分子からもネットワーク状高分子ナノファイバーの作製に成功した。以上(1)-(4)のように、予定した研究計画を十分に達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に、ナノ相分離機構の実証とネットワーク状高分子ナノファイバーの作製・構造評価手法を確立した。この材料が持つ大きな自由表面は、やわらかな高分子表面の特異性とバルクの材料物性を結びつける大きな可能性を秘める。本年度は、ネットワーク高分子ナノファイバーを測定対象とすることで、従来適用が難しかったバルク材料評価手法を用いて高分子表面の材料物性を明らかにしたい。具体的には、(1)示差走査熱量計によるガラス転移点評価、(2)固体NMRによる高分子鎖の運動性評価、(3)高圧ガス吸着法によるガス吸着特性評価、(4)蒸気の吸着特性評価などを予定している。
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Research Products
(7 results)