2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規ナノ相分離機構によるネットワーク状高分子ナノファイバーの創成
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23685052
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐光 貞樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (80432350)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 相分離 / 高分子表面 / ナノファイバー / 熱測定 / ガラス転移 / ガス吸着 / 蒸気吸着 / 吸着材料 |
Research Abstract |
ネットワーク高分子ナノファイバーが大きな自由表面層を持つメソ多孔体である点に着目し、これまで難しかったバルク材料評価手法による高分子表面の材料物性評価を試みた。 (1)温度変調型示差走査熱量計によるガラス転移点の測定を行なった。この多孔体では、バルクのガラス転移点とそこから20℃程度低い温度で2段階のガラス転移挙動を発見した。ガラス転移点での比熱の変化を検討した結果、低い温度領域のガラス転移は高分子表面層に由来するもので、表面層の厚みは1-2nm程度と見積もられた。 (2)固体NMR分光法による緩和時間測定を用いて高分子鎖の運動性を評価した。同一条件下で測定した多孔体の炭素原子の緩和時間はバルク試料の値より大きく、多孔体試料で分子運動性が高くなっていることがわかった。一方、水素原子の緩和時間測定では、明瞭なスピン拡散の影響が見られ、その拡散距離と緩和時間の傾向からも、多孔体には分子運動性が高い領域が不均一に存在し、その空間スケールは熱測定で見積もられた表面厚みと同程度であることが示された。 (3)高圧CO2吸着特性では、バルク試料の3-7倍のヘンリー定数が得られた。吸脱着ダイナミクス評価では、10気圧でのCO2吸収量は、飽和吸収量の90%までが1分以内に到達し、また減圧することで1分以内に完全に脱離できた。多孔体が連続細孔を持つことにより、ガス分子が材料全体に素早く拡散し、ナノファイバー表面領域にある運動性の高い高分子鎖が、ゴム状高分子のような高速で大容量のガス吸着特性を示すことを明らかにした。 (4)蒸気吸着特性では、高蒸気圧領域で毛管凝縮による容量の大きな選択的吸着が見られた。低温での凝縮により大量のガスを液体として取り込んだ後、僅かに温度を上げることで蒸気として放出できるので、蒸気圧が小さな凝縮性ガスに対して、温度変化による効率的な分離システムが設計できる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に達成した点を列挙する。(1)透過型電子顕微鏡を用いたナノスケールでの3次元トモグラフィを導入し、3次元再構成画像により多孔体の構造評価技術を深化させた。(2)温度変調型示差走査熱量計でガラス転移点評価し、高分子多孔体の表面層に由来する新たなガラス転移を見出した。(3)固体NMR分光法による高分子鎖の運動性評価から、マクロなガラス転移挙動と分子スケールでのダイナミクスを関連付けることができた。(3)高圧CO2ガス吸着特性評価により、ナノファイバー表面領域にある運動性の高い高分子鎖が、高速で大容量のガス吸着特性を示すことを明らかにした。(4)蒸気吸着特性評価から、蒸気圧が小さな凝縮性ガスに対して、温度変化による効率的な分離システムが設計できる可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究の最終年度なので、これまでに作製したネットワーク高分子ナノファイバーを、実用化できる材料として用途展開を図る。吸着材料の新しい用途として、オイル成分が混入した高濃度汚染水(随伴水)の浄化が資源エネルギー・環境保全に関連したホットトピックの一つとして注目を集めている。本研究では、高濃度汚染水からの有機成分(オイル)の吸着分離と低温での脱着回収を可能にすることで、蒸留法に対するエネルギー効率の向上を狙う。
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Research Products
(7 results)