2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23686006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長浜 太郎 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (20357651)
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Keywords | スピンエレクトロニクス / 磁性 / MBE・エピタキシャル / 先端機能デバイス |
Research Abstract |
既存のスピン流研究では磁性金属内のスピン偏極度を利用したスピン流生成が行われてきた。最近、この分野の理論家であるSlonczewskiにより、磁性絶縁体内のスピン波励起を利用することで効率よくスピン流が生成できることが示された。そこで本研究では、良質なスピネルフェライト層をもつ磁気抵抗素子を作製し、磁性絶縁体によるスピン流生成を実験的に確かめることを目的とした。 このような研究においては、できるだけ高品質な酸化物薄膜を得ることが重要である。そこで、構造が単純であるスピネル構造磁性絶縁体に着目し、高品質スピネルフェライト膜の作製を行った。今回取り組んだのは、主にCoFe204薄膜である。CoFe204は逆スピネル構造を持つフェリ磁性体であり、キュリー点は800Kと室温でも安定に磁性を発現する。また、格子定数は約8.4Aと、単結晶基板としてよく用いられるMgOやAl203などとの格子マッチングもよい。 まずはAl203上にバッファー層および下部電極としでPt(20nm)を蒸着し、その上にCoFe204を作製した。製膜はFeとCoの電子銃による2源同時蒸着とし、酸素雰囲気中で行った。製膜中の基板温度および製膜後の熱処理温度の最適化を行い、構造をRHEEDで確認したところ、良好なストリークパターンが得られ、Al203(0001)/Pt(111)/CoFe204(111)のエピタキシャル成長が確認された。また、AFMによる表面構造の測定により、Ra=0.2nm程度の平坦な表面を有していることが分かった。 また、CoFe204は多元化合物であり、組成の制御が重要である。現在は電子銃を用いて蒸着を行っているが、製膜レートの安定性を考えるとk-cellを用いた方が安定した製膜レートを得ることができる。ただしCoやFeは融点が高いため注意が必要である。以上の点を検討し、高温セルを導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高品質なCoFe204スピネル膜をエピタキシャル成長することができた。また、将来の接合構造を考えると下部電極としてPtを挿入した構造で作製できたことは意味がある。さらに、高温セルも導入することができた。これは安定した組成制御には欠かすことができない。導入は3月とやや遅くなったが、本件は11月の追加採択であり、製造納期を考えると致し方ないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は高温セルを用いてさらに膜の品質を高める。とくに接合構造においては界面の平坦性や拡散層の抑制が重要となるので、留意する。また、生成したスピン流が流れ込む非磁性金属の選択は重要である。スピン流伝導体としての特性がよいとされるAlやAg、格子定数のマッチングがよく、Fe/Au系で良好な層間相互作用が報告されているAuなどを検討する。さらに、電子線リソグラフィーなどの微細加工技術を用いて、磁気抵抗素子の作製プロセスを立ち上げる。スピン流実験では電流によるエルステッド磁場の影響を抑えるために100ナノメートル程度の極小素子を作製することが必要となる。これらの素子を用いて磁気伝導特性の評価を行う。
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