2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23686006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長浜 太郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20357651)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | トンネル磁気抵抗効果 / スピントルク / スピネルフェライト |
Research Abstract |
本研究は2010年にSlonczewskiにより提案された、磁性絶縁体中のマグノン生成を利用したスピン注入磁化反転(Phy. Rev. B. 82 054403)の実現を、フェリ磁性絶縁体であるスピネルフェライト層を含んだTMR素子を用いて目指すものである。 本年はこの研究の要となるFe/MgO/FeーMTJ層とフェライト層をエピタキシャルに積層したTMR素子の作成に取り組んだ。構造はFe/MgO/Fe/非磁性金属/スピネルフェライトという多層膜である。特に非磁性金属部は有効にスピン流を伝達するために重要な部分であり、高品質かつ極薄な薄膜を作製することが不可欠である。本年は非磁性金属としてCr,Au,Ptを試みた。RHEEDおよびAFMによる表面形状の評価から、Cr,Auは凹凸を持った表面となってしまい、トンネル素子作製には適さないことがわかった。構造的な観点からはPtが適していると考えられる。 さらに、Fe/非磁性金属/フェライト層では、層間交換相互作用の有無を確認する必要がある。たとえばFe/Cr/Fe系では非常に強い層間交換相互作用が観測される。そこでCoFe2O4/Cr/Fe多層膜を作成し、磁性層間に交換相互作用が働くか調べた。その結果、MgO(100)基板上に成長した場合は交換相互作用は観測されなかった。(110)上に作成した場合はCrが薄い領域において保磁力の増大が確認されたが、これは格子ミスマッチによる歪の効果ではないかと考えられる。これは、フェライト-磁性層間のスピン流観測に関して、層間交換相互作用を考慮する必要はなく、単純なシステムとして解析できることを示す重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は概要にも述べたとおり、フェライト層を含んだトンネル接合膜のエピタキシャル成長、非磁性層を介したフェライト-磁性層間の磁気的結合の確認、および電子線リソグラフィーを用いた極微トンネル接合素子作成プロセスの確立を行った。エピタキシャル成長に関しては、成膜時の条件パラメーターが多く、一時的に装置の不調なども合ったため、当初の予定よりも時間がかかってしまったが、フェライト層を含むトンネル接合多層膜のエピタキシャル成長を実現できた。層間交換相互作用については当初の予定にはなかったが、今後の研究の遂行に欠かせないため実験を行った。 微細加工に関しては通常のTMR接合の加工に関してはプロセスは確立され、200×400nmの素子において140%のTMR比が得られた。ヘテロ接合に関しては、製膜に遅れが生じたこともあり、来年度の課題とした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まずフェライト層を含んだ磁気トンネル接合での微細加工プロセスを行い、その磁気伝導特性を調べる。電気伝導評価ではフォトリソグラフィーによるミクロンサイズの素子を用いる。特にフェライト層は電気的には絶縁層となるので、電気伝導特性に与える影響を調べる。以上の特性評価を行った後、ヘテロ接合デバイスでのスピン波によるスピン流の生成を目指す。素子のリード線をヒーター線として活用し、フェライト層に熱を入れる。TMR素子のフリー層をスピン流で反転し、TMR素子部で検出する。場合によってはバイアス電圧や外部磁場に寄ってアシストし、フェライトの有無でのスピン流の詳細を調べる。スピン注入実験においては本年度確立した電子線リソグラフィーによる超微細素子作成技術を用いて、フェライト層を含んだヘテロ接合膜の微細加工によるデバイス作製を行う。
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Research Products
(5 results)