2012 Fiscal Year Annual Research Report
ワイドバンドギャップ半導体結晶をベースとした高感度ホログラム記録材料の開発
Project/Area Number |
23686011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤村 隆史 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50361647)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | フォトリフラクティブ効果 / 窒化物結晶 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ワイドバンドギャップ半導体結晶を用いて従来のフォトリフラクティブ材料では、両立することができなかった高い記録感度とメモリー性を併せ持つ新しいホログラム記録材料を開発することにある。 本年度は昨年度に引き続きAlN結晶におけるフォトリフラクティブ特性を反射型二光波混合実験により評価した。特に誘起された屈折率格子と光の干渉縞との間の空間位相差を評価するため、高速に位相変調ができる電気光学変調器を用いて一定周期ごとに干渉縞の位相を三角波状に掃引してその時の応答をフォトディテクタ―にて検出した。通常、外部から電界を印加しないかぎり、屈折率格子と干渉縞との間の空間位相差は90度となるはずであるが、本研究で用いたAlN結晶では、わずかに90度から空間位相差がずれるという結果が得られた。このことは、AlN結晶におけるフォトリフラクティブ効果では、大きな屈折率変化を誘起することで知られているニオブ酸リチウム結晶のようにフォトボルタイック効果の影響が現れている可能性があり、大変興味深い。また本実験でもちいているAlN結晶にHeCdレーザーからの325nmのレーザー光を入射すると、大きな光誘起吸収が生じることもわかった。この光誘起吸収は、もともと吸収が生じている波長550nmより短波長側で吸収が約1.5倍に増大するというもので、その吸収変化は、光照射を止めたあとも分単位で持続する非常に寿命が長いものである。さらにこの誘起された吸収は、その吸収帯の波長の光を照射することにより、もとの状態に戻すことができる。したがって今後なんらかの方法によってフェルミレベルをさげて、現在生じている吸収を無くすことができれば、この光誘起吸収を利用して、再生時にも消えない不揮発性のホログラムを記録できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
AlN結晶の評価においては順調にすすんでいるといえる。しかも紫外光照射によって紫外から緑色領域にわたって長寿命で大きな光誘起吸収が生じることがわかり、AlN結晶においても再生時に消えないホログラム記録が実現できる可能性が示せるなど予想外の大きな進展があった。一方で、GaN結晶における添加物探索においては、先のAlN結晶の評価に多くの時間を割いてしまったことや、昨年度の研究代表者の異動の影響などにより、予定どおりにはすすんでいない。しかし25年度は、学生の補助1名をつけ、AlN結晶の評価とやや遅れているGaN結晶の添加物探索とを同時並行で鋭意すすめていく。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定にはなかったことではあるが、昨年度に我々が観測した波長325nmのUV光照射によって生じる光誘起吸収を利用して、ホログラムの2波長書き込みを試みる。2波長書き込みはゲート光の照射によって書き込み光の波長の吸収を増加させることで、ホログラム記録の感度をコントロールできる方法である。これを利用すると再生時にも消えない不揮発記録が可能となる。現時点ではゲート光照射以前にも書き込み波長に吸収が存在するため不揮発記録は見込めないが、将来的にフェルミレベルを下げることができたときの大きな知見になると考えられる。またGaN結晶における添加物探索も学生の補助1名をつけて当初の計画通りにすすめていく。
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