2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23686013
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
芦原 聡 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (10302621)
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / 量子エレクトロニクス / 超高速現象 / 光物性 |
Research Abstract |
〔目的〕本研究では、中赤外光の波形整形を利用して多原子分子の振動状態を自在にコントロールする手法(赤外コヒーレント制御)を開発する。特に凝縮相分子を対象とする実験を行い、手法の有効性を明らかにする。 〔波長5ミクロン帯での波形整形と波形評価〕 音響光学素子を振幅・位相変調器として用い、6cm-1l以下の振動数分解能をもつ中赤外波形整形システムを確立した。電場相関法を利用した波形評価法により、振幅・位相変調が忠実に行われていることを高精度に評価した。 〔位相変調による二次元核波束の軌跡制御〕 金属カルボニル錯体を対象とする赤外コヒーレント制御実験を行った。CO伸縮振動の対称モードおよび逆対称モードを同時に励起することによって重ね合わせ状態をつくり、準位間のエネルギー差に相当する振動数の量子ビートを観測した。ここで、スペクトル位相変調により、重ね合わせ位相の操作に成功した。これは、励起直後において、核波束が基準座標上で描く軌跡を制御(あるいはローカルモードの振幅を制御)したことに対応する。 〔位相変調による経路間干渉の操作〕 対称モードと逆対称モードの結合音に至る励起経路は複数存在する。そこで、励起効率を最大化するためには、各経路から生成される波動関数同士の干渉を操作する必要がある。ある遷移に関わる振動数成分の位相を変化させるにつれ、励起効率が三角関数状に変化することを観測した。すなわち、部分的ではあるものの、経路間干渉を操作することができた。今後、あらゆる経路からの寄与が強め合いの干渉を起こすよう制御する。 〔本研究成果の意義〕経路間干渉は、コヒーレント制御の根本的な要素である。凝縮相においてこの根本的な要素が機能するか否かが、コヒーレント制御の有効性を左右する。その意味で、赤外振動遷移における経路間干渉を初めて実証した本研究の意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた研究を遂行することができたため。具体的には、複数の振動モードの重ね合わせ状態の制御と経路聞干渉の操作という、赤外コヒーレント制御の根本的な要素を実証できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
経路間干渉に関しては、まだその一部を制御したに過ぎない。そこで、すべての経路の間の干渉を操作することが第一の課題である。次に、各経路におけるVibrational Ladder Climbingを最適化した上で、経路間干渉の操作を試みる。これは、位相変調の自由度の中で励起効率を最大化することに対応する。その上で、現実に反応の起こる分子系を探索し、反応制御を試みる。
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