2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模経済データにみられる相転移挙動の計算科学的研究
Project/Area Number |
23686019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 立顕 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特任研究員 (10376387)
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Keywords | スーパーコンピュータ / 経済物理学 / 不動産価格 / 外国為替市場 / 企業間ネットワーク / ベキ分布 / 非定常性 / ページランク |
Research Abstract |
経済現象の本質である相転移挙動に注目し,超並列計算を用いて良質で大規模な経済データを分析した.土地価格,円ドル為替レート,企業間ネットワークについて以下の成果を得た. 1,日本の地価公示価格のデータを用いて,住宅に使用される土地についての価格分布の経年変化を調べた.その結果,バブル期はベキ分布するが,バブル前とバブル後は対数正規分布することを明らかにした.さらに緯度と経度の情報を用いて全エリアを複数の領域に分割して分析を行った.狭い領域でみればバブル期でも正規分布していること,領域の広さが大きくなるに従い正規分布から乖離していくことを明らかにした.バブル期は同質とみなせる地域(同一需給圏)の広さが狭くなっていると考えられる.これらの結果は,バブル期とバブル後について首都圏の住宅取引データから得た結果を補完するものになっている. 2,レート変動の時系列の定常性を,強定常の定義に基づいて検証した.時系列の二つのセグメントを取り出し,それらの分布の同一性を検定した.価格変異分布のコルモゴロフ・スミルノフ検定と同符号継続回数分布のカイ二乗検定を用いて,レート変動の非定常性を実証した.この非定常性はニュースのような偶発的な外乱により生じていると考えられる. 3,日本企業約100万社の企業間取引ネットワークから最大強連結成分を取り出した.取り出した約43万社の企業について,ランダムジャンプなしのページランクを算出して分析した.その結果,成長率の大きい企業は,単位リンク数あたりのページランクが大きいことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
経済物理学,統計物理学,統計学,複雑システムなどに関連した様々な国際会議で発表を行い,研究の先進性・方向性を確認しながら進めことができた.さらに,有意義な議論により,今後の研究の進展につながる知識・情報の収集を効率的に行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
国内の住宅価格について得られた分析結果が普遍的な性質であることを確認するため,米国や香港などのデータを入手し,海外の住宅価格の分析にも取り組む.為替レートの非定常性を外乱の性質から探るため,ニュース・アーカイブのデータを入手し,ニュース時系列の分析にも取り組む.分析のために必要な計算量がさらに膨大になるため,現在利用しているHA8000クラスタシステム(東京大学情報基盤センター)だけでなく,平成24年度に正式運転開始予定のFX10スーパーコンピュータシステム(東京大学情報基盤センター)も活用し,効率的に進める.
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Research Products
(17 results)