2012 Fiscal Year Annual Research Report
大規模経済データにみられる相転移挙動の計算科学的研究
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23686019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 立顕 東京大学, 経済学研究科(研究院), 研究員 (10376387)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スーパーコンピュータ / 超並列計算 / 経済物理学 / 不動産バブル / 中心極限定理 / 対数正規分布 / ベキ分布 / ファンダメンタルズ |
Research Abstract |
超並列計算を活用することにより,大規模な経済データを実証分析し,考察を進めた.まず.住宅価格のデータを用いて不動産バブルを研究した.バブルとは価格がファンダメンタルズから乖離することであると定義されるが,ファンダメンタルズを精度高く推計することは現実にはできない.そこで,物件の価格分布の地域間格差からバブルを定義する方法を提案した.首都圏の住宅売買データと地価公示価格データを用いた分析から,住宅価格はバブル期はベキ分布,バブル前後は対数正規分布に従うことが分かっている.住宅価格が専有面積,筑後年数,都心までの時間,構造,最寄り駅などのさまざまな要素の和として決まるとすれば,中心極限定理より住宅価格は対数正規分布に従う.しかし,バブル期は人々が近視眼的になるため物件間の価格格差が大きくなり,価格が同質とみなせる裁定が成立する地域の広さ(同一需給圏)が小さくなる.このことを用いて,住宅価格が対数正規分布から乖離する度合いから同一需給圏の大きさを定義し,バブルの度合いを定量化する手法を開発した.米国の住宅価格データを分析した結果,バブルの度合いが大きい州ほど物件の差し押さえが多い傾向にあることを明らかにし,手法の有効性を確認した.次に,金融市場とニュースの関係について研究した.市場価格変動の高頻度時系列にみられる非定常性は,ニュースのような外乱により引き起こされると考えられる.市場がニュースに反応して変動していることを調べるために,ロイター社のニュースアーカイブのデータを言語処理の手法を用いて分析した.ニュースをその内容を表わすトピックスに分類した上で,ニュースが株式市場の株価に及ぼす影響を解析した結果,株価のボラティリティの多くはニュースで説明つくことを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幅広い分野の国際会議や学術雑誌で研究成果を発表した.大規模な経済データの解析に大型計算機を用いる取り組みとして,オリジナリティある研究として評価されている.
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Strategy for Future Research Activity |
外国為替市場,住宅市場,企業間ネットワーク,ニュース・アーカイブデータについてこれまでに行ってきた解析から,相転移の考え方を用いた経済データ分析の有効性が確認できた.今後,株式・先物市場のデータ,商業地のデータ,新聞記事のデータなど他のデータについての解析にも取り組み,新たな知見の発見を試みる.
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Research Products
(14 results)