2011 Fiscal Year Annual Research Report
高密度電子流衝突を利用した金属原子再配列・再結合による疲労損傷治癒
Project/Area Number |
23686021
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
細井 厚志 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60424800)
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Keywords | 疲労 / き裂 / 進展 / 高密度電流 |
Research Abstract |
本研究は,高密度電子流衝突によりステンレス鋼の疲労損傷治癒を実現し,その効果を定量的に評価することを目的とした.具体的には,表面活性化プリコート処理と呼ばれる手法により,き裂面に生成された酸化皮膜を除去し再酸化防止及びき裂面接合促進のための金属薄膜をコーティングする処理を施し,高密度電流を印加することによって疲労損傷治癒を実現した. 実験により,複数回の電流印加によって疲労き裂先端から根元まで疲労き裂全体を閉口させることに成功した.これは試験片に電流を印加することによってき裂先端部に高密度電流場が形成され,発生したジュール熱により熱圧縮応力が作用したことによると考えられる.き裂面間においては発熱によって形成された架橋構造や溶融物が観察された.高密度電流場はき裂先端に形成されるため,一度の電流印加でき裂先端部が閉口する.複数回電流を印加することにより,き裂の閉口とともに高密度電流場の集中箇所がき裂先端部から徐々に根元へと移動し,最終的にき裂全体が閉口した.閉口したき裂の内部観察を行ったところ,き裂の内部も閉口しており,き裂面同士接合していることも確認された. 電流印加によって修復したき裂の効果を定量的に評価するために,応力拡大係数を一定に制御し,Paris則に基づいて電流印加前後のき裂進展速度を定量的に評価した.その結果,電流印加後の疲労き裂進展速度は電流印加前と比較して約30%低下することが示された.これは引張負荷時のき裂開口が抑制され,き裂進展抵抗が増大したためである.より適切な表面活性化プリコート処理と電流印可を施すことによって,さらに大幅に疲労き裂進展速度を低減させることが可能であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高密度電流場制御により疲労き裂を治癒し疲労き裂進展速度を低減させることに成功し,その効果を定量的評価した.以上のことから,当初の研究目的がおおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果において,高密度の電流印加により疲労き裂を治癒し,き裂進展速度を低減させることに成功した.さらに,き裂進展における低減効果を定量的に評価した.一方,疲労破壊はその大半が疲労き裂の発生に費やされる.そこで今後は疲労き裂発生過程の損傷を治癒し,その治癒メカニズムを明らかにする.さらに,転位論に基づく転位累積モデルを構築することによって,き裂発生までの残存寿命を定量的に評価する.
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